河南省の大水害 政府系メディアは被害を過小評価【禁聞】

河南省では連日の大雨による貯水量の増加を解消するため、複数のダムから放水が行われて深刻な災害が発生しています。なかでも鄭州市の水害が最も悲惨な結果を招きました。しかし当局はこの災害を故意にぼかして処理しており、政府発表の被災者数に対し内外から疑問の声が上がっています。インターネットに公開された尋ね人の数は、政府発表の人数をはるかに上回っています。

7月24日午後、河南省政府は記者会見で、16日から24日午後4時までの間に豪雨によって省内の137の県(市、区)の1373の鎮や村に住む930万人以上が被災し、58人が死亡、5人が行方不明と発表しました。

しかし、この人数をいぶかしむ声が上がっています。中国のSNSには行方不明者の情報を求める書き込みが後を絶たず、その数は政府の発表した人数をはるかに上回っています。なかでも、「網易数帆(ネットイース)」のウェブページだけで少なくとも行方不明者130人の個人データが掲載されています。

河南省滎陽市(けいようし)崔廟鎮(さいびょうちん)の村(海溝寨)に住む18歳の女性盧陽涵(ろ・ようかん)さんは20日に洪水に襲われた自宅から流されて今も消息が分かりません。

河南省滎陽市崔廟鎮海溝寨の村民
「(彼女が)家の中にいたときに2階まで浸水して、2階が全部沈んでしまった。その後流された。私たちの村の下流にもいくつかの世帯があるが、やはり一人が行方不明になり、一人は家の中で死んだ。南部の水の多くがあそこに溜まり、私たちのところの川から流れた。だから私たちの下流の家がすべて浸水してしまった。とてもひどいことになった」

行方不明者情報によると20日午後、33歳の劉凱(りゅう・がい)さんは鄭州市中牟県(ちゅうぼうけん)白沙鎮錦繍路と象湖南路(ぞうこなんろ)の交差点の地下管廊の工事現場で行方が分からなくなっています。

別の男性、沙濤(さ・とう)さんは7月20日午後に鄭州市地下鉄5号線に乗車しましたが、地下鉄に水が流れ込んで車両が停車し、夕方6時ごろに沙濤さんと連絡が取れなくなりました。政府発表の地下鉄での死傷者の中に沙濤さんの名前はありませんでした。

数年前から河南省で発生する豪雨が災害を招くようになっています。7月20日に鄭州市上流のダムから事前通告なしで放水が始まり、鄭州市で大規模な洪水が発生しました。市民は何も知らされていなかったため、大勢の歩行者や車が浸水し、流されるケースも相次ぎました。また大量の水が地下鉄5号線の一部区間と京広路トンネルに流れ込んで、悲惨な事故が発生しました。

このほかにも、新郷など多数の地域も深刻な災害が発生しています。そのため、当局が死亡者わずか数十人と発表したことについて疑念が広がっています。

米国在住の時事評論家、邢天行氏
「およそ中共のこれまでのこうした災害においては、天災もあったけれども主な災害はやはり中共高官が人為的にもたらしたものだ。そのため中共はずっとそれらの災害の真実を隠してきた」

米国在住の時事評論家、邢天行氏は、中共が長い間嘘の宣伝を行ってきたために、多くの人は中共高官の職務怠慢や人災の邪悪さに対する理解が欠けているとして、それが災害における死亡や損失をさらに重くしていると指摘しています。

邢天行氏
「かなりの人がいまだにおとなしくあの中でいわゆる政府による救援を待っている。この一点から、中共の長年にわたる宣伝によって彼らが中共を信じていることが分かる。いわゆる(中共)政府は彼らを助けに来るだろうと。しかし実際は彼らがそれに気づく前に、命で対価を支払うことになるかもしれない」

災害発生後に当局はメディアとインターネットを通じて世論に対し誘導型の宣伝を行い、災害状況をぼかしたり、救助活動を美化したりした一方で事実は報じませんでした。しかしそのために、民間から流出した一部の情報が政府の説明の矛盾を顕在化させることになりました。

河南省新郷の村民 李さん
「主に上流のダムからの放水だ。どのみち私たちに通知はなかった。昨日の夜に四つのダムから今放水中だとも聞いた。今、私たち2階の住民の場合はまだここにいれるが、水位がさらに上昇したら2階にとどまることはできない。車や家財などはすべてダメになる。すべて水に沈む」

救援物資の収集担当者は、災害が非常に深刻であるため、目下医薬品や食糧などの物資が不足していると明かしています。

鄭州市民 邱さん
「洪水で閉じ込められ、彼らは飲まず食わずだ。物資を送るしかない。ここはどこもひどいありさまだ。たとえば新郷の県所在地や新郷県のすべてが水没し、誰もそこに行けなくなった。救援用のカヌーでしか行くことができない」

河南省の災害は深刻で民衆が苦境に立たされていますが、24日に政府系メディア「河南日報」は習近平チベット視察の際の講話をトップニュースで報じ、テーマは『トイレ革命』についてでした。河南省の災害に関するニュースは一番下の欄で報じられ、しかもそれは習近平のいわゆる「重要指示」を学ぶよう求めるものでした。

 
関連記事