8月17日、国外に逃れた重慶市出身の青年、王靖渝(おう・せいゆ)さんはツイッターに、自身と婚約者の呉歓(ご・かん)さんが自由を得たと投稿しました。呉歓さんはさらに、自身はアラブ首長国連邦のドバイで拉致され、ドバイにある中共の秘密拘留所に入れられていたとも述べています。この件は国際世論の注目を集め、中共が国外に「非合法的監獄」を設置していることを示す最初の証拠だと考えられています。
8月17日、米国に拠点を置く非営利団体「対華援助協会(China Aid Association,ChinaAid)」のウェブサイトに投稿されたある動画で、王靖渝さんの婚約者の呉歓さんが、中共が国外に「非合法的監獄」を設置していると明かしました。
重慶出身で今年19歳の王靖渝さんは、中共が発表した中印国境紛争での死亡者数に疑問を呈したことで当局から批判され、重慶警察によってネット上で追跡されていました。今年4月に王さんは米国に向かう途中にドバイで飛行機を乗り換える際、現地警察に逮捕されました。呉歓さんは王さんを救うためにドバイに向かい、ドバイ警察と中共駐ドバイ大使館職員に逮捕され、警察拘留センターに3日間拘留されると、今度は別荘を改造した違法監獄に収監されたと話しています。
王靖渝さんの婚約者 呉歓さん
「ドバイの拘留所と中国の秘密監獄での記憶だが、あの頃には『時間』というものがなかったので、記憶が少し混乱している。あの非合法的監獄の中では精神が崩壊しそうになっていた。非常に苦しく、希望のない日々だったので、私の記憶はあまり鮮明ではないが、そこで起きたこと、彼らが私にした行為はすべて覚えている」
呉歓さんは、彼女が非合法的監獄で拷問されたとき、李旭航と名乗る人物が自分は中共駐ドバイ領事館の総領事だと話していたと述べています。
呉歓さん
「彼らは5月28日に私を逮捕し、3日後に釈放した。そこにはほかの人もいて、見たところ新疆のウイグル人のようだった。というのは私の視力はあまりよくなく、中は日が差さず灯りがないので。誰かが中にいてもよく見えなかったが、一部の人は新疆のウイグル人のようだった」
呉歓さんは、秘密監獄に収監されていた間、中共の職員は彼女に対しサインを強要し、王靖渝さんを貶める話をして、王靖渝さんに迷惑をかけられていたと告発するよう強要されたと話しています。
この事件は国際社会から注目され、対華援助協会が助けの手を差し伸べました。6月11日、ドバイ当局は呉歓さんを釈放しました。
AP通信は8月16日、呉歓さんの話は北京政府が国外にこうした施設を持っていることを示す今のところ唯一の根拠だと報じています。このような国外の監獄は、中共が今も継続的に反体制派やウイグル人などをはじめとする海外在住の一部中国人を拘留したり国に連れ戻したりしていることを示す証拠です。
英日刊紙「タイムズ」も同様に、呉歓さんが以前に中共がドバイに設置した秘密監獄に収監されたことを報じました。これらのニュースによって、中共が国外の反体制派を弾圧していること、そして中共がその他の独裁政権国家からサポートされていることを新たに認識する人が増えています。
国際法に詳しい頼建平(らい・けんぺい)氏は、中共は国外に違法な拘留所を設置しているが、これは国家主権問題に関わる問題だと述べています。
中国政法大学国際法修士 頼建平氏
「国外であれば、中共が悪事を働こうとする場合、理屈の上では現地警察や現地の軍と共に行わなければならない。つまり彼らはその国やその政府と何らかの関係を持つ必要がある」
頼建平さんは、親共産主義の多くの国は、政治的な便宜や経済的利益を求めて中共の非道なふるまいを認めていると話しています。
頼建平氏
「中共は国境を越えて逮捕や拘留を行うことができる。例えばタイでは、王炳章氏を拉致して中国に連れ戻し、香港銅鑼湾書店の株主である桂明海氏を中国に連れ戻した。彼らにはこのようなことができるのだ。だが、国外にこのような拘留場を設置していたことを初めて聞いたときにはショックを受けたが、それをおかしなことだとは思わなかったし、彼らならそれくらいはやるだろうと思った」
中国の元警官で民主公益活動家の董広平(とう・こうへい)さんは「中国は各国でブラックボックス的なことを行っている。特にウイグル人への迫害においては、彼らの邪悪な本質と分けて考えられない。もしあなたが海外で中共批判の主張を発表した場合、彼らは全てを監視し記録する」と指摘しています。
元中共警官で民主公益活動家 董広平氏
「中共は海外のこうした活動家の反中共的発言、いわゆる反政府的言論に関する情報を専門的に収集している。それからその発言者の家族を探し出して、中国国内にいるその家族に圧力をかける一方で、その発言者のファイルを作り、その人が帰国したら迫害を行う」
董広平さんは、中共はさらに海外で人を買収して、海外にいる反体制派を迫害したり、彼らに帰国を強いたり、余計な発言をしないよう圧力をかけたり、罪を認めたり、こうした約束を破らないよう迫ったりしていると述べています。
頼建平さんは、これは中共が彼らの力や強権を海外まで拡大するときの手法であり、その国の国家主権の侵害であるだけでなく、普遍的価値観や国際法にも反しており、世界や中国系の人、華僑に対する脅威を形成するため、国際社会からの強烈な責任追及や反論を浴びせられるべきだと述べています。