中国のエリートも強制立ち退きの被害者に

中国ではエリートですら、もはや強制立ち退きから逃れられないようです。裁判所の判決が出ているにも関わらず、北京の地元当局は別荘の解体に取りかかりました。補償はもちろんありません。

北京市当局は、地方政府の建設プロジェクトで建てられた別荘群を違法建築だとして取り壊しを始めています。

「八達嶺(はったつれい)別荘」と呼ばれるこの別荘群の強制立ち退きは、8月16日から始まりました。

別荘の所有者の多くは、各業界のエリートです。

中には、中国でも最も権威のある中国科学院の幹部や国営企業(中国石油天然氣集団)の幹部、有名大学の教授(清華大学)、全国政治協商会議の委員などが含まれています。

入居の前に、購入者の全員が、所有権を保証する不動産権利証書に署名しています。

これらの文書は、強制立ち退きは違法であることを証明しています。

解体通知が出されると、多くの住宅所有者は鎮政府を訴えました。その後裁判所は、「物件を強制的に取り壊す権限は誰にもない」との判決を下しました。

裁判所の判決にも関わらず、住宅の解体は続いています。

現場の映像からは、当局が大量の機動隊を投入しているのが見て取れます。

機動隊は解体現場への入り口を封鎖し、住宅所有者が入れないようにしています。複数のショベルカーを同時に使えば、数分で住宅を破壊することができます。

大紀元は八達嶺鎮政府に問い合わせましたが、回答は得られませんでした。

この件に詳しい関係者によると、住宅所有者には何の落ち度もないといいます。物件は八達嶺鎮政府が建設・販売したもので、元々の建設許可を発行したのは当局側だと指摘しています。大紀元は、匿名を希望する住宅所有者の一人に話を伺いました。

「八達嶺別荘」住宅所有者
「八達嶺鎮政府は証書の発行を拒んでいる。そのため、権利証書の申請が遅れています。この問題は長いこと続いています」

ある北京の元弁護士は、このような状況を明らかにしたうえで、遡求権行使は現時点ではほぼ不可能だと述べました。

さらに、利益を巡って庶民と争い、庶民の利益を奪うのは、中共政権の本質であると述べています。

元弁護士 賴建平氏
「鎮政府はこれまでに、ほぼ全ての土地を売却し、その利益を使い込んだのです。それでも莫大な経費を支払わなければならない。そこで利益のために人々と争い、中国の人々から取ることができる利益は何でも奪う。それが最も重要なことなのです」

8月初め、八達嶺鎮の鎮長は質疑応答の会議に出席しました。その席で鎮長は、自主的に解体に協力した人には、補償金として1平方メートルあたり300元(約5100円)を支払うと発表しました。

別荘の所有者たちは、平均して1棟あたり1000万元(約1億7000万円)以上投資しています。

立ち退きに抵抗する者については、当局は強制的に取り壊し、それによって発生する全ての費用を負担することになるとしています。鎮長は、法的手段でその費用を徴収するだろうと付け加えました。

この状況について、ある住宅所有者は、最近の権力者は、知識と敬意が欠けていると述べています。

「八達嶺別荘」住宅所有者
「政府のお墨付きであるため、私たちはそれを信じていました。政府が承認したプロジェクトだから、私たちは信頼していたのです。鎮政府が、証書の発行を拒否しただけではなく、私たちの家まで取り壊すとは考えもしませんでした」

この地区での取り壊し作業は今も進行中です。

〈字幕版〉

 
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