アリババグループが中共当局の「共同繁栄(共同富裕)」政策に支援金1000億元(約1兆7000億円)を投じることに同意しました。評論家は、この巨額の「気の進まない寄付」をめぐって、アリババと政府のそれぞれに思惑があると考えています。しかし、中共は民間企業を搾取と利用の対象としか考えていないため、民間企業にとっては災難が降りかかったとも言えます。
「浙江新聞」は9月2日、アリババグループが「共同の繁栄をサポートするアリババの十大行動」への取り組みを発表したと報じました。この取り組みは2025年までに「共同の繁栄」のために合計1000億元を投じるとしたものです。
十大行動の内訳は次のとおりです。①ハイテク導入を拡大して、発展途上地区のデジタル化を支援する。②中小企業の成長を支援する。③農業の産業化を推進する。④中小企業の海外進出を支援する。⑤質の高い雇用を支援する。⑥労働者雇用の柔軟な福利厚生向上をサポートする。⑦都市部と農村部のデジタル化政策の均質化を促進する。⑧デジタル・デバイド(情報格差)を縮小して、弱者グループのサービスと補償を充実させる。⑨末端医療現場の能力の向上を支援する。⑩200億元(約3400億円)を投じて「共同繁栄の発展基金」を立ち上げる。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、アリババが承諾した投資金額は、この規模の企業にとっては大きいと述べています。市場調査会社のファクトセット(FactSet)のデータによると、アリババの時価総額は9月1日の時点で4610億ドル(約50兆6600億円)に達しました。また、今年5月に公布された公式データによると、アリババの2020会計年度の年間売上高は5097億1100万元(約7兆6400億円)で、純利益は1324億7900万元(約1兆9871億円)でした。
習近平総書記が先日、経済発展は一部の人が「先に豊かになって」からすべての人が「共同で繁栄」する必要があると提起すると、中国のハイテク関連の富豪らが次々と「自主的に」巨額の寄付を申し出ました。テンセントはこれより前にすでに、「共同繁栄計画」を立ち上げるために500億元を寄付すると発表しています。
一方、アリババは最近、当局からターゲットにされており、4月には当局から「独占禁止法違反」を理由に罰金182億元(3050億円)の支払いを命じられています。さらに8月にはスキャンダルが明るみに出て、中共メディアから痛烈に批判されたほか、株価も下落しました。
台湾大学国家発展研究所法学博士の曾建元(そう・けんげん)氏は、「民主国家は税を徴収して貧富の格差の解消を図り、道徳的に呼びかけたり税制優遇措置を講じたりして寄付を奨励する。だが中共による独裁政権社会においてはそれがいびつな形になる」と指摘しています。
台湾大学国家発展研究所法学博士 曾建元氏
「中国大陸の政府はこのような『気の進まない寄付』をさせ、これらの大企業や金持ちの実業家は、本来なら政府が負うべき責任を割り振られている。こうしたやり方は本末転倒だ。これらの企業家は軒下で仕方なく頭を低くしている。彼らは一部の資金を負担することで、平和を買っている」
アリババが今回出資したうちの1/5は浙江省の開発支援に使われます。浙江省はアリババ本社の所在地であるほか、中共が建設中の「共同繁栄モデル地区」でもあります。
大紀元のコラムニストの王赫(おう・かく)氏は、アリババは政府に迎合してはいるが、実際にはこの機に乗じて業務の転換と拡大を進めていると分析しています。
大紀元のコラムニスト 王赫氏
「アリババの十大事業のうち、最後の『200億元の基金の設立』を除く残りの九つの行動計画は、実質的にはアリババの業務転換、業務の掘り下げであり、新たな事業の開拓だ。彼らはこうやって、中共の『共同繁栄』に協力しながら、このチャンスをつかみ、業務の拡大を行っている」
王赫氏は、実はこれも中共当局の思惑が反映されたものだと述べています。
王赫氏
「中共は『共同繁栄』というスローガンを掲げることで、彼らに大きな圧力をかけている。その目的は、彼らに資本圏内で流量を利用してお金を巻き上げるのをやめさせ、その代わりに、彼らに産業部門へ参入させ、社会の実際の情報化を推進し、国有企業と協力して情報化の改造を実行しようとしている」
アリババが「十大行動」を段階的に実施する過程で、王赫氏は中共の国有株式が介入する可能性があり、恐らくアリババに対する監督管理を強化するためだと指摘しています。
王赫氏
「当局の動機が何であるにせよ、それが実行される限り、中共の体制は腐敗し変形した体制だから、どんな政策を通達しても、すべては私腹を肥やすチャンスになる。民間企業を苦しめても、それが貧困層の救済になるとは限らない。この金はすべて関連の特権階級のポケットに入る。したがって、彼らがこの政策を実施することで生まれるマイナスの結果は何だろうか。それは、民間企業が大きな災難を被ることだ」
曾建元氏も、民間企業の本業は社会扶助ではないとしたうえで、中共当局は民間企業の発展のためにより良好な政治的・経済的環境を提供することは考えておらず、民間企業を利用し搾取することしか頭にないが、これは民間企業の成長を阻害する一方で、資本の流出を招くと考えています。