中共はここ数か月の間に台湾の防空識別圏に頻繁に侵入しており、米国が同盟国とともに台湾を守る以外に、専門家らも次々と調査や研究を開始しました。ワシントンのシンクタンク「ジェームズタウン財団」がこの程発表した報告書は、中共が台湾占領を諦めないいくつかの理由を分析して、現在は待ったなしの状況にあると警鐘を鳴らして米国に注意を促しました。
今年5月にジェームズタウン財団から、マシュー・ブラジル博士の『なぜ台湾とそのグローバル半導体サプライチェーン問題が米国にとって重要なのか(The Prize: Why Taiwan and its Place in the Global Semiconductor Supply Chain Matter to the United States)』が出版されました。
この報告書では、米国と全世界に対する台湾の重要な地位と、中共が台湾占領後に手にするメリットが多角的な視点から分析されています。
これにはまず、九州から沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島を結ぶライン「第一列島線」は中共の太平洋進出に対する防壁であり、台湾はこの第一列島線の中核をなしているため、中共にとってその戦略的位置づけは計り知れない価値があると記されています。これに対し、西太平洋における日本と米国の防御のため、特に中共の覇権の世界的な拡大を抑制するために、台湾の地政学的な位置づけは極めて重要であり、台湾はかつて第一列島線の「不沈空母」とも呼ばれていたとも述べられています。
このほか報告書には、世界のチップサプライチェーンにおけるTSMC(台湾積体電路製造)の台湾製チップは宝の中の宝だとも記されています。
現在、チップ市場の63%が台湾製で占められており、特にTSMCの世界シェアは56%を占め、チップ幅わずか5ナノメートルという世界最高峰のチップ製造技術も備えています。同社は2022年から3ナノメートルのチップ生産を開始するとも報じられています。
これに対し、中国大陸のチップ製造技術は台湾よりもはるかに遅れており、2020年に中国で使用されたチップの94%が輸入品でした。中共にとってTSMCは宝ともいえます。報告書は、台湾海峡で戦争が起きて中共は台湾を制圧してTSMCを引き継いだとしても、米国は何らかの輸出規制を発動してそれを制限するだろうと警告しています。さらに、社会の混乱によって工場の閉鎖や減産が発生した場合、世界の半導体供給にボトルネックが生じるだろうと警告しています。
報告書は最終的に、中共が常に懸念している歴史問題によって、台湾進攻は常に中共指導者層の重要目標に位置付けられていると分析しています。
報告書は、共産党政権樹立後の約50年の間に中共軍が国防方面に集中的に取り組んだのは、台湾占領に必要な「情報化」と「制空能力」が当時の中共軍には不足していることを認識していたからだと指摘しています。そのため、中共の5か年計画に台湾進攻という目標計画を特に盛り込んだとしています。
ブラジル博士は、中共軍の空中戦能力が2020年に向上したのであれば、このタイミングは台北とワシントンにとって北京よりもより切迫したものであり、「待ったなしの状態にある」と警鐘を鳴らしています。
ブラジル博士は、台湾進攻は米国とその同盟国が容認できるものではないと中共に明確に示すよう米国政府に呼びかけたほか、世界は全力で台湾を守り、かつ「失敗は許されない」とも述べています。