中共の戦闘機が海抜30メートルの低空飛行で台湾西南空域を飛行したり、レーダーの不感帯を突破したりするなどして頻繁に台湾に侵入しています。これについて、空軍の機密事項が漏洩する台湾史上最大のスパイ事件が関係していると指摘する声があります。
台湾史上最大のスパイ事件の首謀者として、謝錫璋の名前が挙がっています。謝錫璋は1997年に香港のビジネスマンとして訪台し、その後22年間にわたり台湾に潜伏し活動していました。台湾当局は、謝錫璋が2006年から台湾に諜報組織を作るよう中共軍委から指示され、会食や海外行の航空チケット、現金などを対象者に提供するなどして対外的に組織の拡大を図り、陸・空・海軍の複数の退役将校の取り込みに成功していたことを把握しています。高雄では海軍に浸透し、北部では空軍高官を取り込んで、前国防部副部長の張哲平の取り込みを試みたほか、空軍司令の退役二級上将の沈国禎とも接触していました。
沈世偉国防部法律事務司長(2021.04.29)
「我々はまたしても処罰の形態を増やした。外国政府や外国の人民、大陸の人民、香港・マカオ住民、あるいは派遣されてきた人物に軍事機密を漏洩した場合、処罰を増やす必要がある」
スパイの浸透を厳重に防止するため、行政院は今年4月に陸海空軍刑法の一部条文修正草案を可決し、現役の軍人の機密漏洩に対する刑事責任を厳格化しました。台湾ではスパイ事件が頻繁に発生しているにもかかわらず、その多くで軽微な判決が下されています。例えば、共産党軍元上尉の鎮小江には懲役4年、周泓旭のスパイ組織事件では懲役1年2か月、元海軍中将の柯政盛事件では懲役1年2か月、労働党主席の鄭昭明とその息子によるスパイ組織事件ではそれぞれ懲役10か月と1年という非常に軽い判決が下されました。
諜報員は台湾に広く浸透して情報を入手しています。国家安全機関は、台湾には約5000人の中共諜報員が活動していると推定しており、過去15年で発覚した約100件のスパイ事件のほとんどが軍事機関に集中しています。これについて、スパイ事件が台湾と米国をはじめとする同盟国との安全保障分野での協力関係に影響を与えるのではないかと懸念する声もあります。研究者の郭育仁氏は、この件は兵器の販売と安全保障協力に確実に影響を与えるだろうとして、米国も国家安全保障上の抜け穴を埋めることを望んで台湾と意思疎通を図っており、国家安全保障上の抜け穴が存在するために、米国側が機密漏洩のリスクを懸念して現時点でF-35戦闘機をはじめとする先進兵器の販売を考慮しなくなる可能性があると指摘しています。