インフレの波が世界中に押し寄せています。多くの国の銀行関係者はインフレが一過性のものではないとの見方を示しており、中国出身の経済専門家も、米国と中国がそれぞれ通貨を大量に発行しているため、インフレが起きてこれまでに類を見ない複雑な状況になるだろうと分析しています。
この一年間で米国の中古車価格は24%、肉類の価格は12%、暖房用油の価格は43%上昇しているほか、ガソリンは1ガロンあたり1ドル以上上昇しています。
庶民が徐々にコロナ禍から日常を取り戻しつつあるなか、買い物や旅行をしようとして初めて、各種雑貨からガソリンに至るまで、すべての物が値上がりしていることに気づいています。
ボストン大学ビジネススクールのジェイ・ザゴルスキー教授は取材を受けた際に、政府の最新データによると物価の値上がり幅が連続5か月で5%を越えているとして、この状況が今後も続くようであれば物価は倍になるだろうと述べています。
中国では急激な気温の低下に伴い、冬が来る前にエネルギー危機がさらに高まっています。10月18日、原料炭先物価格が1トンあたり1829元を超えて過去最高を更新したほか、天然ガスの価格も過去最高となりました。当局は電気料金の値上げ幅を20%緩和しました。
北京在住の独立系経済学者、鞏勝利(きょうお・しょうり)氏は、今回のインフレは米国と中国という二大経済大国が大量の通貨を発行していることに関係していると指摘しています。
北京在住の独立系経済学者 鞏勝利氏
「今年の状況は以前よりも複雑で、しかも過去にこのような時期はなかった。例えば米ドルの発行や人民元の発行だ。人民元の発行は、歴史上稀に見るほど大きなものとなっている。人民元は2000年には14兆しかなかったのに、現在の人民元の発行額は年々増加して200兆を超えている」
それに加えて、エネルギーや原材料のコストも上昇したことが全体的な形勢にも影響及ぼし、世界にも波及しています。
鞏勝利氏
「人民元の発行量が大きいのは、人民元が非流通性の国際通貨で、中国製品の生産しか後押しできないからだ。人民元が商品に姿を変えて、その商品が今度は世界に流通しているうえ、世界に長期的に流通している製品の1/3は中国で製造されている。従って、現在の世界のインフレは、人民元と中国製品に関係している」
鞏勝利氏は、この種の状況は「核融合」とも言えると指摘しています。中国に続いて、米国が6兆ドルを一大インフラ計画に投入して国債の限度額をさらに引き上げたため、これらの通貨が流通したら各国のインフレと産業チェーンに予想外の変化が起きるのではないかと推測しています。