半導体分野で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は11月11日、日本に新工場を開設することを発表しました。この動きは、世界的な半導体不足を受けてのことです。
半導体チップはもはや、現代社会の暮らしを支える重要な存在となっています。スマートフォンやパソコンといった電子機器だけでなく、レーダーやミサイルなど防衛・軍事機器にも欠かせないものとなっています。
TSMCは、iPhoneやゲーム機、戦闘機などに使用するチップを製造する会社です。米国ではあまり知られていませんが、防衛・軍事機器にも使用する最先端チップの製造を、この企業だけに依存しているのが現状です。しかし、米国だけでなく、世界がTSMCに依存しているため、同社の優位性が世界経済にもたらすリスクも、懸念されています。
最先端のチップは、ウイルスよりも小さい5ナノメートルを可能にしており、現時点ではTSMCとサムスンだけがそれを製造する能力を持っています。一方、米国の最先端チップメーカーであるインテルは、10ナノメートルまでしか製造できません。
TSMCは台湾に本社を置き、現在世界的に供給が逼迫している自動車用のチップも製造しています。同社は今年初め、新技術や設備の開発に3年間で1,000億ドル(約11.4兆円)を投じると発表しました。
日本に新設する工場は、熊本県菊陽町に建設され、22~28ナノメートルの自動車産業やハイテク産業向けのローエンド・チップに特化するとしています。しかし、工場の着工は来年で、工場が稼働するのは2024年になるため、当面は世界的なチップ不足を解消することはできない見通しです。
この新工場の建設に対し、日本政府は歓迎の意を示しており、同社に対し外資系企業を支援する上で最大の資金援助となる、数千億円規模の補助金を出す予定とのことです。
TSMCは、日本以外でも事業を拡大させており、現在アリゾナ州に120億ドル(約1兆3680億円)規模の半導体工場を建設中です。また、中国の南京工場でも生産能力拡大に向け、設備投資を行っています。