「シンプソンズ」の天安門事件に言及する回 配信されず=香港

香港で今月から米「ディズニープラス(Disney+)」が動画配信サービスを開始しました。しかし、米人気アニメ「ザ・シンプソンズ」を巡り、天安門広場を描く放送回が配信されなかったことが発覚しました。同回は、1989年の天安門事件を暗示するもので、中共の規制当局により、最も厳しく検閲されているトピックの一つです。

配信されなかったのは、「Goo Goo Gai Pan(グー・グー・ガイ・パン)」と題された回で、2005年に配信されました。

同回では、シンプソンズ一家が赤ん坊を養子に迎えるため、中国を訪れます。

北京の天安門広場に立ち寄った一家は、「1989年、この場所では何も起こらなかった」と記された記念碑を目にします。

これは、1989年6月4日に天安門広場で民主化を要求する学生らに対して、中共軍の暴力的な取り締まりによる大虐殺を、中共当局が隠蔽していることを揶揄しています。天安門事件での死者数について、英外務省の公文書では約1万人に及んだと推察しています。

同回について、中共政府が検閲を指示したのか、あるいはディズニーが配信を自粛したのかは明らかにされていません。

中共の規制当局によるメディア検閲の強化が進んでおり、1989年の天安門事件関連のキーワードや情報を優先的に検閲しています。中共当局は、天安門事件を巡る情報について、軍による武力弾圧の判断を正当化する上での脅威と見なしていると考えられています。

かつて香港は、自由が保障されていました。しかし、1997年香港返還の際、高度な自治は保障すると約束されたものの、中共当局の介入により、徐々に自由は軽視され始め、昨年6月に国家安全維持法の施行後は、言論や表現の自由が大幅に後退しました。

評論家らは、同法の施行について「香港の終焉」と指摘しています。国家安全法により、中共政府に批判的な言論への取り締まりを強化させた形となりました。

 
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