中国不動産業界の苦境は、工業の重要分野である鉄鋼業界に直接的な衝撃を与えるほどに深刻化しており、コンクリートや家電といったその他の業界にもその影響は波及しています。評論家は、不動産業界の低迷は相当長い期間継続する可能性があり、中国経済の成長を1~2ランク引き下げるだろうと考えています。
中国不動産企業の債務危機は今年の下半期でさらに悪化し、債務不履行を警告するブザーが鳴り続けています。債務の圧力を受け、開発業者は現金の支出を抑えるため、投資建築プロジェクトを減らしています。
ロイターは、不動産企業の危機はすでに飽和状態に達しており、工業を牽引する重要な動脈の一つである鉄鋼業界に対し、建築ニーズの萎縮が直接的な影響を与えており、それがコンクリートやガラス、家電といったその他の重要分野にまで波及し始めていると報じています。
中国の鉄鋼の半分以上が建築分野で消費されています。鉄鋼業界はまた大量の雇用を提供して膨大な建築・製造業サプライチェーンを支えており、経済に影響を与える風見鶏の役割を果たしてもいます。
中共国家統計局のデータによると、今年6月以降、鉄筋とコンクリートの生産量がそろって減少傾向にあることが示されています。11月の鉄筋生産量は23.7%減少して1777万トンとなり、同時期のコンクリート生産量も18.6%減少して1.99億トンまで下がりました。
米サウスカロライナ大学エイキン校の謝田教授は、不動産業界は中国経済のさまざまな分野に影響しており、わずかな変化で全体が影響を被る状態になっていると指摘しています。
米サウスカロライナ大学エイキン校の謝田教授
「鉄鋼、コンクリート、ガラスといった製品が主に都市部の住宅建材であるならば、不動産会社が次々と破産するとその後はどうなるか。販売量が減って鉄鋼のニーズが必然的に下がる。鉄鋼ニーズが下がるとその他の採鉱や精錬といった一部の業界も道連れになる。そしてもっと多くの川上産業がすべて悪影響を被る。実際のところ、最終的には経済全体が悪影響を被ってしまう」
鉄鋼価格は現時点ですでに、今年初めの記録的な高値から急落しています。特に10月以降、鉄鋼価格はひたすら低調で、一部の下げ幅は1トン当たり1000元(約18000円)以上に達しました。
鉄鋼メーカーの株価もダメージを受けています。A株市場に上場している江蘇沙鋼(しゃこう)集団や鞍山(あんざん)鋼鉄集団の株価は、この約半年の間にそれぞれ累計で45%と17%下がっています。
鉄鋼業者は通常、冬季の間に比較的低価格で鉄鋼製品を大量に買い占め、正月休みが明けて消費が回復したころに販売します。
一方、北京の鉄鋼関係者は、自身は今のところ、このような「冬季の買い占め」は行っていないと明かしています。
不動産市場の低迷が飽和状態になった影響は、その他の業界でも散見されます。例えば、家電業界では5月から11月の間のひと月当たりの冷蔵庫生産台数が前年同期比で下降の一途をたどっており、パワーショベルのニーズも過去数か月で減少傾向を示しています。
ムーディーズの分析結果によると、不動産業界は中国経済に単一で貢献している最大の業界で、2021年のGDPの約28%を占めています。そのうち7%は不動産業界が直接的に貢献したもので、残りの21%は建築、設備、機械のサプライチェーンなどが間接的に貢献した結果です。
英金融大手HSBC(香港上海銀行)のアジア経済調査部門共同代表のフレデリック・ニューマン(Frederic Neumann)氏は、不動産の建築活動は相当長い間低迷が続く可能性があり、中国経済の成長を1~2ランク引き下げるのは免れないだろうとの見方を示しています。
経済を刺激するため、中共の中央銀行は12月6日、金融機関の預金準備率を15日から0.5%引き下げると発表しました。これは年内で2回目の引き下げとなります。12月20日には、最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)を引き下げると発表しました。
一方でスタンダード&プアーズは、財務体質の劣る不動産企業の救済は依然として難しく、より多くの開発業者が債務不履行のリスクに直面するだろうと予測しています。
12月11日、中共国家統計局の寧吉喆(ねい・きちてつ)局長は「経済年次総会」の席で、不動産業界を再び基幹産業の位置まで引き上げましたが、外部からは、これは経済構造転換が期待されていた目標に達していないことを認めたのだと考えられています。
大紀元時報コラムニストの王赫(おう・かく)氏は、不動産市場の低迷は、鉄鋼などの川上産業に対する圧力となっているほか、金融システムと地方財政に致命的なダメージを与えており、中国経済が逃れることのできない問題になっていると指摘しています。
大紀元時報コラムニスト 王赫氏
「当局の現在の政治的な雰囲気とこの経済政策において、全体的な流れを見るとすでに解決できない状態だ。彼らは不動産市場をソフトランディングさせたいのだが、ソフトランディングは中国経済の転換が成功するかにかかっている。ところで現在の問題は、中国経済の転換ができないことだ。不動産で儲けるという過去の信仰はすでに崩れ去ってしまった。これは根本的に流れが変わったということだ。つまり政府が今後いかに規制緩和したり、措置を緩めたり、刺激策を講じたりしたとしても、この問題は解決できないのだ」
統計によると、中国の上位100都市の11月の売れ残り物件数が過去5年で最多となっています。
スタンダード&プアーズは、来年の中国の全国住宅販売件数は10%減少し、2023年もこの傾向は続き、5%から10%前後下がるだろうと予測しています。