香港の報道の自由に対する新たな打撃として、警察が民主派メディアの事務所を急襲し、現スタッフと元スタッフを逮捕しました。オンラインメディア「立場新聞(スタンド・ニュース)」は香港の抗議デモを支持する声を伝える報道機関として知られていますが、12月29日、同社はFacebook上で即時に業務を停止し、全従業員を解雇したことを発表しました。同社は、警察が編集副主任の自宅前に到着する様子を撮影した動画を投稿しました。
「立場新聞」は、香港に残されていた数少ない民主派報道機関の1つでした。12月29日、香港警察200人以上が事務所を強制捜査し、証拠品やコンピューターを押収し、幹部ら7人を逮捕しました。
香港政府によると、逮捕容疑は「扇動出版物発行の共謀罪」だとしています。
香港時間の午前6時頃、複数の警官が「立場新聞」の編集副主任、陳朗昇(ロンソン・チャン)氏の自宅前に現れました。陳氏は香港ジャーナリスト協会の会長でもあります。同氏は連行されて尋問を受け、その後釈放されました。陳氏はメディアの取材に対し、警察に電子機器、銀行カード、記者証を押収されたと語りました。
「立場新聞」編集副主任 陳朗昇氏
「立場新聞はプロフェッショナルな報道を行ってきた。それについては一点の曇りもない。全世界がそれを知っている。どんな告発がなされようと、立場新聞がプロフェッショナルな報道をしてきたという事実を変えることはできない」
メディアの報道によると、4人の元幹部が逮捕され、その中には民主化運動の強力な支持者である人気歌手の何韻詩(デニス・ホー)氏もいるとのことです。何氏は立場新聞の元役員でした。
何氏は2019年に次のように語っています。
歌手で香港民主化運動家 デニス・ホー氏
「私たちは皆、香港で危険に晒されている。香港は単なる中国の一都市になり、言論の自由、抗議の自由を全て失うかもしれないという瀬戸際に立たされているからだ」
元議員のマーガレット・ン(呉靄儀)氏も逮捕された一人です。
一方、香港警察の幹部は今回の強制捜査を「成功」と評しました。
今回の動きは、当局が香港で反対意見を取り締まる一連の流れを受けたものです。
今年6月、当局が香港国家安全維持法に違反しているとして「蘋果日報(アップル・デイリー)」を非難した後、警察は同社の事務所を強制捜査しました。同社は資産を凍結され、その後閉鎖されました。アップルデイリーの元発行人である黎智英(ジミー・ライ)氏も12月28日、扇動罪で追起訴されました。
また最近、天安門事件の犠牲者を追悼するために作られた像が、香港大学から撤去された事件もありました。
12月29日、一部の人権団体はこの強制捜査を非難し、ワシントンに拠点を置く香港民主主義評議会(HKDC)の事務局長は声明の中で、「北京政権は報道の自由に基づく活動を扇動と決めつけることで、香港で真実を語ることを容認しない姿勢を明確にしている」と述べています。