北京冬季五輪中に、中国女子テニスプレイヤーの彭帥選手が中共高官の同席のもと、外国メディアの取材を初めて受け入れ、自分が性的暴行を受けたことはないと述べたうえ、引退すると発表しました。
中国の著名テニスプレイヤーの彭帥選手はフランスの日刊スポーツ紙「レキップ」の独占取材に対し、自分はいかなる性的暴行も受けたことはないと改めて述べたうえ、引退を宣言しました。「彭帥事件」の発生後、同選手が西側メディアの取材を受け入れたのは今回が初めてです。
取材は北京五輪クローズドループ内のホテルの一室で行われました。彭帥選手の取材には、中共オリンピック委員会事務局の王侃(おうかん)主任が同席していました。
レキップは、今回の取材を行うにはインタビューを中国語で行うことと、質問する内容を予め提出しておくことに同意する必要があると中共から求められたと報じています。
36歳の彭帥選手はこの日、性的暴行を受けたと訴えたことはなく、ウェイボーに投稿したコメントは自分自身で削除したと話しました。削除した理由については「削除したかったから」とだけ答えています。
彭帥選手は昨年11月上旬にウェイボーに、元中共政治局常務委員の張高麗と不倫関係にあり、張高麗から性的関係を強要されているとの長文を投稿していました。しかし、この告発は投稿から20分後には削除され、彭帥選手との連絡も取れなくなりました。
その後、彭帥選手の自由と身の安全を懸念する声が国際社会から上がり、中共当局は彭帥選手を公の場に出さざるを得なくなりましたが、その際は毎回、政府職員が同席しています。彭帥事件は北京冬季五輪ボイコットの声を後押しする形となりました。
IOCスポークスマンのマーク・アダムス氏
「IOC会長は彭帥選手と対面での面談を行った」
レキップの取材の前日に、IOCのバッハ会長はオリンピッククローズドループ内で彭帥選手と面会して夕食を共にしており、この時に元IOCアスリート委員会会長のカースティ・コベントリー氏も同席していました。
IOCは7日に記者会見を開いて状況を説明しましたが、彭帥選手に対する性的暴行については触れていません。
彭帥選手は今、自由に発言できないのかとの質問に対し、マーク・アダムス氏は次のように答えています。
IOCスポークスマンのマーク・アダムス氏
「あなたの質問に対する答えだが、これはIOCが判断すべきことではないと考えている。我々は一スポーツ組織だ」
また、IOCは彭帥事件に対し独立調査を促すのかとの質問に対してはこのように答えました。
IOCスポークスマンのマーク・アダムス氏
「私はIOC会長の意見に同意する。独立調査の必要性は、我々が判断すべきではない」
ある人権団体は以前に、IOCは中共当局と同じ穴のムジナであり、アスリートの人権と安全の確保という責務に背いていると批判しています。
彭帥選手は今回の取材の中で、ウェイボーへの投稿は自分で削除したと話しているため、投稿を自分の手で行ったのは間違いないうえ、張高麗との不適切な関係を間接的に認めたことにもなります。
中共規律処分条例第135条には、第三者と不適切な関係を持った場合、情状の深刻さに応じて警告又は除籍、党籍の抹消処分が科されると定められています。
彭帥事件に関して、中国国内では厳しい情報封鎖が行われており、張高麗の地位は今も揺らいでいません。