NY在住建築家の母親 五輪開幕直前に投獄

国際オリンピック委員会は、オリンピック・ムーブメントの目標は、平和でより良い世界を構築することだとしています。しかし、中国ではオリンピックの開催が、他の何かを正当化するために利用されていると言われています。中国系米国人の建築家に、今年と2008年の二つの北京五輪が彼と彼の家族にもたらしたものについて伺いました。

それは2008年のことでした。

サイモン・チャンさんは中国の西安で、テレビで北京オリンピック開会式を見ていました。

ニューヨーク在住建築家 サイモン・チャン氏
「開会式は素晴らしいように見えた。主要国の首脳がほぼ全員参加した。団結を祝う大祝典の様なものだ。しかし私は、その『素晴らしい』式典を見ているときも、自分の母が何をしているのか、どんな苦しみを味わっているのかが頭を離れなかった」

その日、チャンさんの母親季雲芝(き・うんし)さんは、中国の強制労働収容所で150日のうちの1日を耐えていました。季さんは、法輪功学習者です。法輪功は、1999年以前に中国で人気を博した精神修養法で、中共政権は法輪功を国から排除するために、1999年から法輪功に対する迫害を開始しました。

季さんは殴打、平手打ち、強制摂食などの暴行を受け、看守が近くの農場に売るために、とうもろこしの穂を剥ぐという強制労働を強いられていました。

ニューヨーク在住建築家 サイモン・チャン氏
「母はそこで、もう少しで死ぬところだった」

平和と人権を祝うはずのオリンピックは、中共政権によって反体制派だけではなく、宗教的及び少数民族の逮捕や迫害のために利用されました。全ては、外国人がオリンピックに殺到する中、いわゆる「社会の安定維持」という名目で行われました。

アムネスティ・インターナショナルは、2008年だけで100人以上の法輪功学習者が拘禁中または釈放直後に拷問やその他の虐待により死亡したことを明らかにしました。

しかし、これらの報告があっても、結局中国が今年の冬季オリンピックを開催することは止められませんでした。

2022年北京冬季オリンピックが開幕する3日前、チャンさんの母親は再び逮捕されました。夫の目の前で、警察に自宅から連行されました。その日は旧正月休暇の初日で、まさに家族が集う時でもありました。

ニューヨーク在住建築家 サイモン・チャン氏
「母は今、ハンガーストライキをしているが、もう65歳だ。過去20年間に受けた迫害のため、母の健康状態はあまり良くない。とても心配だ」

季さんが警察に連行されるのはこれで3度目です。最初は2001年でした。

ニューヨーク在住建築家 サイモン・チャン氏
「拘置所に行き、母を家に連れて帰った日のことを覚えている。母はとても軽くなっていた。逮捕される前は体重が70キロぐらいあったはずだ。16歳だった私は、母をおぶって家に帰った。母は本当に軽く、私はそれをはっきりと覚えている。母の私への話し方から、母が本当に弱りきっているのがわかった」

しかし、その苦難も季さんの心を変えることはありませんでした。

ニューヨーク在住建築家 サイモン・チャン氏
「母は根っからの温かい心の持ち主で、本当にいい人だ。母は我が家の親戚一同の中心的存在で、家族の行事を取り仕切っていた。その一方で、母に頑固なところもあるのは私たちも認めている。母は一度正しいと思ったことは諦めない」

チャンさんは2013年にニューヨークに移住し、現在は建築家として働いています。彼は母親を中国から脱出させようと何度も試みたものの失敗しました。中共当局が母親のパスポートの発行を拒否したためです。

チャンさんは中国国外にいる人々にメッセージを発信しています。

ニューヨーク在住建築家 サイモン・チャン氏
「中共の宣伝に騙されてはいけない。中国の人々は幸せに暮らしている、誰もが尊重されている、というのは全くの嘘だ。私の母、私の家族がそうではないことの生き証人なのだ」

〈字幕版〉

 
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