中共の言論統制が日増しに厳しくなり、中国全土では一つの主張しか口に出せないようです。ですがある研究報告によって、共産党の洗脳工作には真の意味での効果がなく、中国人、特にエリート層の中には政府に同調していない「沈黙の大多数」が存在していることが示されました。
中共当局は台湾問題で強硬姿勢を強めているだけでなく、戦闘機を絶えず台湾海峡に飛来させて威嚇していますが、中国の一般大衆は開戦を支持していません。これは、スタンフォード大学コミュニケーション学教授のジェニファー・パン氏と政治学助教の徐軼青(じょ・いつせい)氏の共同調査によって導き出された結論の一つでした。
2018年と2019年に行われた2回の調査の中で、調査対象者の大部分は、「政府は可能な限り外交的・経済的な手段によって国の主権と領土の完全性を守り、軍事衝突は避けるべきだ」と考えていることが分かりました。これは、一般大衆は戦争を起こして主権を守ることは望んでおらず、しかも公に戦争を挑発する政策に反対していることを意味しています。
この報告ではさらに、政治・経済・外交に対する中国人の考え方を調査しています。そこから導き出された結論は、中国の一般大衆、特に高い教育を受けた富裕層のエリート階層は、実は中共当局の政策に対し、当局とは違う考えを持っているというものでした。彼らは強烈な権威主義やナショナリズム、民族主義を支持してはいません。このことは、中国で今民主化が進んでいることを意味しているわけではありませんが、これらのデータによって、中共が政策を推進するときに大勢の大衆から異議が表明される可能性があることを示しています。それは、彼らが「沈黙の大多数」であったとしても変わりません。
この発見と以前の一部の見方は対立しています。以前のある研究によると、中共当局に対する中国人の満足度は93.1%に達していました。
台湾国立政治大学国家発展研究所 李酉潭教授
「私はこの報告書は素晴らしいと考えている。彼らは、中国大陸に確かに存在する沈黙の自由主義の大多数を発見したのだ。中国大陸の人々は本当の自分の意見を表明できない。自由メディアも公の知識分子も、人権派弁護士でさえも数年前から厳しく管理されている。だから彼らは公の世論を形成できず、国民社会は抑圧されている」
この調査結果のほかにも、いくつかの実例によって、中国には「沈黙の大多数」が存在することが示されています。中共の厳しい監視から逃れることができたら、彼らは声を上げるようになるといいます。
中共を暗に風刺した『ガラスの心』という曲でインターネットの話題をさらったマレーシアの歌手、黄明志(ネームウィー/Namewee)が次に発表したのは『壁の外』という曲でした。YouTubeという中共がコメントを削除できない場所で、多くのネットユーザーが次のような熱い言葉をコメントしています。
「私は壁の中から、壁の外の自由で民主的な生活スタイルにあこがれている。台湾よ、あなたたちは自分たちの郷土を守ってください。いつの日か私たちが必ず出会えることを信じています」
「壁の中の生活は本当に毎日辛く抑圧されている。この歌を聴いて本当に泣きたくなった。変えたいと思うけど何もできない」
「私たちは壁の中の、道徳的なボトムラインも何のロジックもないいわゆる同胞によって代表されたくない人たちだ。私たちはいつか壁が倒れることを期待している!」
海外の共産党脱党サイトには、毎日おびただしい数の「沈黙の大多数」から、共産党、青年団、少年先鋒隊などの組織からの脱退を宣言する声明が寄せられています。
「共産党指導下の中国では、党籍からの除名はブラックリストに載せられることと同じで、非常に厳しい処分に相当する。それ以降は子供の生活や仕事にも影響する」。山東省青島市の閔偉碧(びん・いへき)さんは、「だからここで中国共産党からの脱党を表明するしかない」と声明文で述べています。
「中国大陸で生きている私たちは、人としての尊厳がどんどん削がれていって、すべてが中共によって強制的に『代表』される…特に、彼らは人民を敵とみなして人民の声を監視し抑圧している」。6人の市民が一緒に次のように宣言しています。「今、中共の共産主義青年団、少年先鋒隊からの脱退を表明し、邪悪な中共組織との一切の関わりを断つ」
北京首都師範大学教育科学学院の元副教授 李元華氏
「社会の中にいる大勢の人はこのような人たちだ。私の身内にもこのような人がいて、やはり高級知識分子だ。彼らは現在のような中共の強権と監視下にいるために声を上げることができないのだ。だから人からは彼らの存在が見えない。しかも、彼らは明らかに中共の独裁政権を疎ましく思っている。だから機が熟したら彼らは間違いなく正義の側に立って、中共のこの種の専制政治に反旗を翻すだろう」
一般庶民を除き、今回の調査によって中国のエリート層の中にいる「沈黙の大多数」は、他の階層の人たちに比べて中共を支持する人が多いわけではないことが明らかになりました。
北京首都師範大学の元副教授、李元華氏は、中共は利益集団であるため、各メンバーは自分の上級と下級に対する信頼感が薄く、彼らは党内の厳しい統制手段を使って政敵を叩こうとしても、自分たちもその中に閉じ込められているのだと指摘しています。
今回、こうした研究を行った二人の研究者は、中国の民衆の観点とイデオロギーに対する新たな発見は、米国の対中政策にとって、重要な参考価値があると考えています。