地球の最も南に位置する南極大陸は、各国の影響力をめぐる争いに巻き込まれています。しかし、豪政府の新たな計画がこの状況を変える可能性があります。
今後10年間で、豪州のドローンやヘリコプターが、南極大陸のペンギンや氷河の上を飛行しているかもしれません。2月22日、豪政府は南極大陸に関する新たな計画ー10年間の資金計画を発表しました。影響力の拡大を図る中国共産党政権を念頭に、南極大陸監視強化に向け、約8億400万豪ドル(約663億円)を投じる計画です。
向こう10年間の資金投資計画は、南極大陸での調査、監視、移動能力を高めることにより、米国やその同盟国に「南極を見張る目」を与えるとしています。
スコット・モリソン豪首相
「我々が守らなければならないのは、南極大陸への脅威だ」
南極大陸の一部の領有権を主張する国は7か国(豪、英、仏、ノルウェー、ニュージーランド、チリアルゼンチン)あり、豪州が主張する領有地は約42%で、最も広い地域を占めています。
豪政府は、どの国も領有権を主張していない地域での活動を活発化させている中共やロシアに懸念を示しています。
中露両政府により、南極大陸で軍事活動および資源探査が行われているとされ、領有権主張のための既成事実化を狙っていると考えられています。
南極大陸には、豊富な地下資源があり、科学調査や国威発揚としての意義があります。
中共政権にとって、南極大陸は国家安全保障上の重要な位置にあり、国際社会における影響力と優位性を高める国家戦略の一部となっているとされています。
南極大陸に位置する中共政権の4つの研究施設のうち3つは、豪州が領有を主張している地域に位置しています。
現在、5つ目の研究施設を建設中です。
中共政権は、南極大陸の領有権について他国の主張を否認する「ノン・クレイマント」に属しています。
では、実際に南極大陸はどこの国のものなのでしょうか?
1959年に調印され、1961年に発効された南極条約により、7か国の領有権の主張は凍結され、南極大陸はどの国にも属さないとされています。ただ、凍結は7か国の領有権主張の放棄を意味しないと明記されています。
しかし、豪戦略政策研究所の専門家は、南極大陸が「地政学的競争」の場になっているとし、一部の国が利権確保のために南極条約を悪用していると指摘しています。
同条約の議定書は2048年に更新される予定です。