ウクライナと中国共産党との関係について見ていきましょう。
ウクライナは、中国共産党と深いつながりがあります。特に、中共政権の海軍近代化における関係が際立っています。
ウクライナと中国共産党との深いつながりはソビエト連邦の崩壊から始まります。
旧ソ連時代、ウクライナ東部には軍需産業が集積しており、旧ソ連の武器供給の拠点となっていました。
旧ソ連軍の空母はすべてウクライナの造船所で製造されていたほか、ウクライナのアントノフ設計局(現企業名:アントーノウ記念航空科学技術複合体)がソ連軍の輸送機などの設計を手掛け、また「ソ連航空産業の心臓」とされたエンジンメーカー・マダシック社がウクライナに設立されました。
2020年、中共政権はマダシック社の買収を試みたものの、国家安全保障上の懸念を理由に買収は却下されました。
しかし、中国メディアの報道によると、マダシック社から3千人近くの技術者が派遣され、同社と共同研究を行っていると伝えています。
中国共産党は、数十年前からウクライナを狙っていました。
1989年に発生した天安門事件以降、西側諸国からの制裁により、中国への軍事交流・軍事技術の供与を大幅に制限したものの、当時ウクライナはまだ軍事技術の提供を停止しませんでした。
それに加え、ウクライナは「東欧のシリコンバレー」と呼ばれ、IT人材が豊富で、科学技術が栄えているため、中共の注目を引きつけました。
中共政権は、旧ソ連で設計されたアドミラル・クズネツォフ級航空母艦「ヴァリャーグ」を購入し、中国初の空母となる「遼寧」に改修しました。
ソ連崩壊を受け、「ヴァリャーグ」号は建造進捗率が70〜80%の未完成状態で、旧ソ連海軍からウクライナ海軍に所有権が移りました。
そこに目をつけた中国人実業家の徐増平(じょ・ぞうへい)氏が中共政権の交渉役として、1998年にウクライナから設計図を含め2千万ドル(約24億円)で購入しました。
徐増平氏は、中国共産党の全国政治協商会議の特別招請人士で、また退役軍人であり、香港在住の実業家でもあります。
「ヴァリャーグ」号は、軍事目的での売却が禁止されていたため、徐氏はマカオで「水上カジノ」として利用するという名目の下、ウクライナから購入しました。
中国メディアの報道によると、 「娯楽施設として利用することの信憑性を高めるために、徐増平はエンターテインメント企業を設立した」とされています。
また、他の中国メディアは、「中共は常に国内で空母を開発する願望を持っていた。未完成の空母を購入し改修するのも、その目的を実現させるのに非常に良い一手だ」と報じています。
購入後、ヴァリャーグ号は大連市で2002年から2009年にかけて改修工事が行われ、2012年に「遼寧」として就役しました。
中共の官製メディアは、「遼寧」について独自で開発したものだと主張しています。
中共政権がウクライナから輸入したのは「遼寧」だけではありません。
「遼寧」の改修計画に合わせて製造された中共軍の艦載戦闘機「殲15」もウクライナと関連があります。
「殲15」は、ウクライナが保有していたロシア戦闘機「Su33(スホーイ33)」の試作機をベースに製造された模倣品であるとされています。
また、駆逐艦等のガスタービンもウクライナ製です。
ガスタービンは、艦船の動力源として性能が最も優れているエンジンです。
中国は、改革開放政策が急進した1990年代初頭まで、科学技術分野において遅れをとっていました。
中国メディアの報道によると、中共政権はウクライナからUGT-25000型(DA80)ガスタービン10基を輸入した後、確実にリバースエンジニアリングを行っているとの見解を示しています。
中共の官製メディアの2014年の報道では、中国軍事技術の成長におけるウクライナの役割を賞賛しています。
報道によると、中共政権は旧ソ連から専門家を招聘するための事業を立ち上げ、多くのウクライナの専門家が技術供与のために訪中しました。
報道では、中共政権はソ連崩壊に際して、軍事産業における主要技術の進展を促進するため、ウクライナの専門家の招聘に尽力し、「個人的な友情を通じて技術的な成果を移転した」とし、またウクライナの専門家は質問に快く回答し、躊躇なく技術と材料を提供してくれたと伝えています。
中共国務院研究開発センターの2002年の内部報告書によると、中共当局は1万人近くの専門家を招聘し、2千件以上の新規プロジェクトを立ち上げたとし、来訪したほとんどがウクライナからの専門家だとしています。
駐ウクライナ大使館の李謙如・一等書記官が記した論説には、2006年だけでも、中共政権は2千人以上のウクライナ専門家を中国に招待したとされています。
環球時報の2014年の掲載記事では、ウクライナなしには、今の中国海軍はありえないと評しています。