中国全人代 食糧確保への危機感示す

国連食糧農業機関(FAO)が発表した最新の報告書は、食糧問題について厳しい予測をしています。

FAOは、世界の食糧価格が8%から最大20%上昇する可能性があると予測しています。

中国では、食糧安全保障が優先課題に策定され、農業での生産量を増やし、新たな輸入源の確保を急いでいます。

今月初め、習近平総書記は第13期全国人民代表大会第5回会議及び全国政治協商会議において、中国の食糧状況について「中国人の茶碗は、中国産の食糧で満たされるべきだ」と繰り返し強調しました。

3月11日にFAOが発表した最新の報告書では、現在のロシアウクライナ侵攻による世界の食糧供給への影響について分析しています。

ロシアとウクライナは、大麦、小麦、トウモロコシの世界有数の農業生産国であり、世界の食料市場において重要な役割を担っています。

2020年から2021年にかけて、両国で栽培された大麦は、世界の生産量の約20%を占めています。また、世界のひまわり油の半分以上がロシアとウクライナから生産されています。小麦の生産においては、両国の生産量を合わせると全世界の3分の1近くに達します。

食料以外については、ロシアは肥料の主産地でもあります。昨年、ロシアは窒素肥料輸出国として世界のトップに立ち、カリ肥料とリン酸肥料においては世界第2位の供給量を誇っています。

しかし、複数メディアによると、ウクライナ侵攻への国際社会からの制裁に対抗する形で、ロシアは主要な農産物や肥料の輸出を停止する可能性があると報じられています。

中国は穀物の主要生産国であるものの、毎年相当量の大豆、小麦、トウモロコシを海外輸入する必要があります。

昨年、ウクライナは米国に代わり、中国にとって最大のトウモロコシ供給国となりました。

2月25日、中国はロシア全土からの穀物輸入を拡大すると発表しました。しかし、輸入量の増加に伴い、潜在的なリスクとして、ロシア産の小麦の黒穂病(くろぼびょう)への感染が懸念されています。

黒穂病に感染した小麦が混入している場合、少なくとも75%は廃棄する必要があります。感染した小麦から作られた小麦粉は、生臭く毒性があります。このリスクへの対応策として、中国は自給率の増加を目指しています。

米農務省の予測データによると、2022年上半期の時点で、世界の穀物備蓄量に占める中国の割合は、過去10年間で約20%増加しており、中国の穀物備蓄量は世界全体の50%以上に達しているとされています。

また、今年1月に中国海関総署(税関)が発表したデータでは、近年同国の穀物輸入が大幅に増加していることが示されており、昨年では中国の穀物輸入量は18%以上増加しました。

ロシアとウクライナからの輸入問題に加え、中国の耕地面積の減少も課題となっており、食糧不足に拍車をかける可能性があります。

李克強首相は全人代での政府活動報告で、「耕地面積18億畝(約1.2 億ヘクタール)というレッドラインを厳守する」と強調しました。

畝(ムー)とは、中国の伝統的な面積の単位であり、18億ムーは、約3億エーカーに相当します。

中国の全人口を考えると、一人当たりの耕地面積は世界平均の半分以下になります。

3月上旬、中国農業農村部の唐仁健(とう じんけん)部長は、中国における小麦の生育は過去最悪の状況に陥る可能性があるとし、また「今年の穀物生産は実に大きな困難に直面している」と述べています。

 
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