米NBAネッツオーナー ウイグル監視技術に投資 米スポーツテレビ

最近、米プロバスケットボール協会(NBA)の「ブルックリン・ネッツ」のオーナー・蔡崇信(ジョセフ・ツァイ)氏が話題となっています。米スポーツ専門ケーブルテレビ「ESPN」の調査報道によると、蔡氏は中国共産党がウイグル人監視するための技術に投資していたことが分かりました。

トランプ前政権により、新疆ウイグル自治区において、中共当局がイスラム教徒のウイグル人に対して強制労働、大量拘束、強制不妊手術を実施し、ジェノサイドを行っていると認定されました。

蔡崇信氏は、ブルックリン・ネッツのほか、女子プロバスケットチームのニューヨーク・リバティと全米ラクロスリーグ所属のサンディエゴ・シールズのオーナーでもあります。また、ロサンゼルス・フットボール・クラブの株式も保有しています。

蔡氏は台湾出身で、米国に移った後、イェール大学ロースクールに進学しました。蔡氏はカナダ国籍と香港での永住権を取得しています。1999年、馬雲(ジャック・マー)氏らとともに中国電子商取引最大手アリババ・グループを創業し、現在は副会長となっています。

ESPNの報道によると、蔡氏がアリババの戦略的投資部門のトップを務めていたとき、中共政権のため、ウイグル人に対する追跡監視に使用される技術の研究を行う中国企業2社に資金を提供していました。

その2社とは、人工知能(AI)を用いた顔認識技術の研究・開発を手がける曠視科技(メグビー)と商湯智能科技(センスタイム)です。ニューヨーク・タイムズの報道によると、メグビーおよびセンスタイムは中共政権の生体認識技術を利用した個人特定や行動監視に協力しているとされています。

2019年、米商務省は、この2社を含む中国ハイテク企業8社を、中共による新疆ウイグル自治区での大量拘束やハイテク監視システムを利用した人権侵害を助長しているとして、事実上の禁輸リストにあたる「エンティティリスト」に追加しました。エンティティリスト掲載企業に対して米国製品を輸出するためには、米当局の許可を必要とします。

アリババはメグビーの30%、センスタイムの7%の株式を保有しています。

蔡氏について、ESPNの報道では、監視技術への投資のほかにも、香港民主化デモへの支持を表明したツイートを巡る蔡氏の対応にも触れています。

NBAヒューストン・ロケッツのゼネラルマネジャー(GM)を務めていたダリル・モーリー氏はツイッターに、「自由のために闘おう。香港とともに立ち上がろう」と書かれた画像を投稿し、2019年香港で発生した大規模な抗議デモへの支持を表明しました。

モーリー氏のツイートは中共政権の怒りを買いました。複数の中国企業がスポンサーから撤退し、NBAの試合放映権を待つ中国国営テレビの中央電視台(CCTV)とIT大手・騰訊控股(テンセント・ホールディングス)はロケッツの試合の放送を取りやめました。

モーリー氏のツイートによるNBAの損失額は、最大40億ドル(約4300億円)に上ると言われています。

NBAは、NBA中国董事会のメンバーである蔡氏について、「中国やその他の世界市場でNBAを成長させるための取り組みにおいて、蔡は貴重な存在となるだろう 」とし、好意的に評価しています。

蔡氏は、フェイスブックに「なぜダリル・モーリー個人のツイートが、中国ファンとの関係に打撃を与えなければならないのか」と投稿し、またNBAに対して、モーリー氏の謝罪及び解雇を要求しました。

また蔡氏は、香港デモの参加者による香港独立への支持率は低水準であったにもかかわらず、香港の民主化運動参加者について、中共の官製メディアが使用した表現である「分離主義者」だと指摘し、強烈に非難しました。

蔡氏のフェイスブック上での投稿は反感を買い、米国では「中国共産党の手先」と非難されていました。

ESPNの報道について、蔡氏はコメントを控えています。

 
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