アンジェリア・ワン(中国名:王琛)さんは、中国の西安出身。2008年からニューヨークを拠点とする神韻芸術団に加わり、1400回もの公演に出演してきた。神韻のプロモーションを目にしたことがある人なら、そこでワンさんを目にしている可能性が高い。
プリンシパルダンサーとなったワンさんも、かつて自信を失っていたことがある。ワンさんは、当時をこう振り返る。
「毎回、舞台の袖で待っている間、『緊張しないで、大丈夫』と自分に言い聞かせていました」
ある年の神韻の公演で、八角形のハンカチを回転させ、空中に投げるプログラムがあった。ワンさんは、回転するハンカチを前方の上に投げ、自分が前方に移動して、戻ってくるハンカチをキャッチしなければならなかった。これが難しく、ワンさんは自信をなくしていたのだ。
そしてある夜、舞台の袖で待っていたワンさんは初めて、自分を応援してくれる周りの人たちの存在に気づいた。
「ダンサーになってから、自分のことばかり考えていました。周りのことに全く気づいていなかったんです。でも私の側で『アンジェリア、頑張れ!』って応援してくれる人たちがいたんです。ステージの向こう側でも、『大丈夫、あなたはやれる!』ってみんなが応援してくれていたんです」
その瞬間、踊っているのは自分だけではないと感じたと言う。
「自分だけが踊っているのではない、みんな一緒に踊っている。それなのになぜ自分のことばかり考えていたのだろう」。このことに気づくと緊張が洗い流され、その舞台は、全く違うものとなった。
「あの日のことを思い出します。ハンカチを投げたとき、投げたのは自分ではないような気がしました。それまでは、必死に戻ってくるハンカチを探し、キャッチしようと慌てていました。でもあの日は、前に進むとハンカチが流れてきて、開いていた自分の手に収まったんです」。みんなのエネルギーが支えているのだろうかと考えたという。そのとき、エゴを手放すと、もっと大きなものが得られると気づいたと言う。
「私たちは踊るとき、呼吸について話します。一緒に呼吸しているかどうか、流れが一緒になっているかどうかを見るんです。みんなが同時にポーズをとると、時間が止まったように感じます。音楽に合わせてそれぞれのダンサーの呼吸を感じるようになるんです。それは、隙間から何かがゆっくりと流れ出てくるような、微妙な感覚です」
「舞台にダンサーが10人いても20人いても、みんながお互いに気持ちを向け、それが伝わってくるんです。みんなが一緒になっている感じ。これが、長い間一緒にやってきた特別なチームワークなんだと思いました」
「自分のことを重視すると、周囲に求めるものが多くなります。そして求めたものが得られないと憤りを感じ、社会は不公平だと人生を不満に思うものです」
「自分ばかりを優先しなければ、人からの笑顔さえも幸せに思い、ありがたいと感じます。だからこそ古代中国の人は『足るを知ることは幸福である』と言ったのです」
神韻は、こうした道徳観や普遍的な原則がどのようなものであったかを描き、誰もが持つ善良さを鼓舞したいと考えている。
(大紀元エポックタイムズより転載)