米映画「アンチャーテッド」フィリピンで上映禁止

南シナ海「九段線」描写で

最近、ハリウッド映画「アンチャーテッド」が南シナ海における地政学的緊張を引き起こしています。トム・ホランドが主演を務める「アンチャーテッド」には、中国共産党が主張する領有権が反映された南シナ海の地図が描写されていたため、フィリピンで上映中止となりました。

「アンチャーテッド」の劇中で、中国共産党政権が南シナ海で独自に設定した「九段線」が描写されました。問題のシーンがこちらです。

今見ていただいた「九段線」とは、南シナ海の地図上にU字形に引かれた九つの破線のことで、南シナ海の90%を含み、中共政権はその線内の領域について主権を主張しています。しかし、フィリピンは「九段線」について自国の領土を侵害しているとし、映画の公開を禁止しました。また、ベトナムも先月同様の理由で映画の公開を禁止しています。

映画プロデューサーのクリス・フェントン氏は、「九段線」を描写したシーンについてどうにかして避ければよかったと述べています。

映画プロデューサー クリス・フェントン氏
「なぜ映画にあの地図を映したのか?あの地図は、セリフや他の映像で簡単に表現することができ、本質的に同じプロットを作ることができたはずだ」

2016年、南シナ海での中共政権の海洋進出を巡り、フィリピンが中国を相手に提訴した裁判では、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所により「九段線」は国際法上の法的根拠がないと認定され、南シナ海問題に対する初の国際的な司法判断が下されました。米国、台湾、ベトナム、マレーシアなども「九段線」に異議を唱えています。

フェントン氏は、このような議論を呼ぶ地図を映画に盛り込むメリットは、ほとんどないと述べました。

映画プロデューサー クリス・フェントン氏
「これがどのようなメリットがあるのか分からない。中国での興行収入につながるとも思えない。実際、この映画自体も中国ではそれほどヒットしているわけではなく、わざわざこのようなことをする意味がなかった」

4月27日、フィリピン外務省は声明で、このシーンは自国の国益を侵害するとし、映画の上映を取りやめると発表しました。

ハリウッドが人口14億人を有する中国の巨大市場目当てに、意図的に物議をかもす地図を映画に盛り込んだ可能性も指摘されています。米映画界の中共当局の顔色を伺う動きは、今回が初めてではありません。今月末に上映されるトム・クルーズ主演のハリウッド大作「トップガン・マーベリック」がその例です。

映画プロデューサー クリス・フェントン氏
「その映画で、トム・クルーズが着用するフライトジャケットにあった台湾の旗をあしらったパッチが消されている。台湾は現在、世界中でそのような扱いを受けており、映画スタジオ『パラマウントピクチャーズ』はその意向を汲んで、『トップガン』のような大作映画で、台湾の旗を撮影から外した」

フェントン氏は、ハリウッドの自主検閲は「創作の自由」が侵害されると懸念を示し、また資本主義と表現の自由は共存できる、ハリウッドにもそうあってほしいと述べました。

 
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