時系列で見る豪中関係

太平洋地域で緊張が高まる中、世界における2つの大国間の関係、及び現況に至るまでにどのような経緯があったのかを見ていきましょう。今回注目するのは、豪州と中国です。

遡ること2015年後半、中国と豪州の自由貿易協定(FTA)が初めて発効しました。この協定により、二国間の貿易障壁と外国投資の抑制が撤廃され、同年、中国は豪州の全輸出の約25%を取り込みました。

その2年後の2017年12月、豪州は「外国影響力透明化法案」を可決しました。この法律は、豪州政府に対する外国の影響力、特に中共からの影響力をめぐる透明性を高めることを意図したものです。

2018年8月、豪州は中国の通信機器メーカーのファーウェイと中興通訊(ZTE)を同国の5Gネットワーク構築事業への参入を禁じました。

その2か月後、中国は豪州の大麦取引に対する反ダンピングのための調査を開始しました。

その後、武漢でCOVID-19が発生し、世界中に広がり始めました。間もなくして、豪州のスコット・モリソン前首相が、COVID-19の原因である中共ウイルス(CCPウイルス)の発生源について、独立した調査を行うことを支持しました。

この動きが中共の逆鱗に触れ、両国の関係は崩壊を迎えました。

その数か月後の2020年5月、中国は豪州の大麦の輸出に対し80%以上の関税を課しました。

一方で、豪州産の石炭を積んだ船は、中国の港で立ち往生していました。中共当局が、石炭を積んだ船を中国の港で待機させるように命じたのです。

しかし、豪州が直面する問題は、中国への石炭輸出にとどまりません。

2020年の後半、豪州の対中輸出は減速しました。中共当局が国内企業に対し、豪州から購入しないよう指示したものとみられます。

影響を受けた商品には、石炭、大麦、銅、砂糖、木材、ロブスター、ワインなどがあります。反ダンピング規定に違反したとして、中共政権は豪州産ワインに対し一時的に212%もの関税をかけました。

その1か月後、豪州は世界貿易機関(WTO)に、中国の大麦輸出への関税を理由に正式に提訴しました。

その報復として、中共政権は貿易関税を引き上げました。豪州産ワインへの一時的な関税を、正式な反ダンピング関税に引き上げたのです。前年の豪州から中国へのワイン輸出額は3億2,500万ドル(約413億円)でしたが、関税引き上げの後、半年足らずで1,200万ドル(約15億円)にまで落ち込みました。

豪州産の石炭を取り巻く状況は、それほど良いものではありませんでした。

中共政権による非公式な石炭禁止令は、2021年初頭まで続きました。中共の公式データによると、12月以降、豪州産の石炭は中国内に入ってきていません。しかしそのために、中国はさらに高額な石炭を、別の供給者から購入することを余儀なくされました。

2021年12月、豪州は米国とともに北京冬季オリンピックへの外交ボイコットを発表しました。

時系列で見ると、2大国間では新たな摩擦が起こっています。

2022年4月、中国はソロモン諸島と安全保障協定に調印しました。多くの国が、中国がソロモン諸島に軍事基地を建設し、運営する足がかりにするのではないかと危惧している中でのことです。しかし中共政権は、これを否定しています。

豪州のスコット・モリソン首相(当時)は、南太平洋の国に中共の軍事基地ができることは、豪州政府にとって「レッドライン(超えてはならない一線)」であると強調しました。

〈字幕版〉

 
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