16日、米国司法省は、米国の機密技術を違法に外国に持ち出したとして、5件の刑事事件を公表しました。そのうち3件は、被告が中国人です。これらの事件は、2月に設立された敵対国に対する「破壊的技術ストライクフォース」による最初の執行措置です。
16日、米国カリフォルニア州北部地区連邦裁判所は、元アップルのエンジニアである王衛宝を起訴しました。王衛宝は、アップル社の自動運転システムに関連する機密情報を持ち出したとして、企業秘密の窃盗および窃盗未遂の罪に問われています。
中国出身の王衛宝(35歳)は、2016年3月から2018年4月までアップル社でソフトウェアエンジニアとして勤務しました。2017年11月に、王衛宝は自動運転技術を搭載した車を開発しているとされる中国企業の米国子会社でエンジニアとして勤務していました。王衛宝の退社後、アップル社が王衛宝のオンライン活動ログをチェックしたところ、退社前の数日間に莫大な量の機密性の高い専有情報および機密情報にアクセスしていたことを突き止めました。その後、法執行機関が王衛宝の自宅を捜索したところ、王衛宝がアップル社から入手した大量のデータが発見されました。王衛宝は夜間に中国に帰国していたということです。
カリフォルニア州北部地区のイスマイル・ラムジー連邦検事
「残念なことに、起訴状に書かれているように、捜査令状が送られた日の晩、20時34分に王衛宝は航空チケットを購入し、23時55分に中国に飛び立ちました」
米司法省は計5件の機密情報流出に関する刑事事件を公表しました。王衛宝のほかに、2人の中国人が事件に関わっているということです。
もう一人の被告は、64歳の李黎明であり、南カリフォルニア州に住む雇用主から機密技術を盗み、自身が設立した会社を通じて中国の企業や団体に提供したと指摘されています。その中には原子力潜水艦や軍用機の開発に利用できる技術も含まれています。李黎明は5月初めに逮捕されました。 有罪判決を受けた場合、最高で10年の懲役刑となります。
3人目の喬湘江は、中国大連にあるカーボンとグラファイトの製造会社の従業員です。同社はイランが弾道ミサイルの部品を生産するのを支援したとして、米国から制裁を受けています。喬湘江は、同社が大陸間弾道ミサイルの製造のためにイランに等方性黒鉛を供給するのを支援し、さらに制裁逃れやマネーロンダリング、銀行詐欺の疑いで告発されています。喬湘江は現在も中国に滞在しているということです。
このほか、調達ネットワークに関連する事件が2件ありました。 ニューヨーク州東部地区に住むギリシャ人とアリゾナ州に住むロシア人2人が、米国の法律に違反して、調達ネットワークを通じてロシア軍と情報機関の機密技術入手を支援した疑いが持たれています。
この5件は、破壊的技術ストライクフォースによる初の強制執行となります。同チームは、中国やロシアなどの敵対国が米国の先端技術を不正に入手するのを阻止することを目的として、今年2月に設立されました。
台湾の国家政策研究基金会の軍事専門家である李正修氏は、中国共産党(中共)軍による技術盗用を抑止することが、まさに米国のこうした行動の目的であると考えています。
台湾国家政策研究基金会の軍事専門家・李正修氏
「現在の戦争は技術的な対決となりつつあります。良い技術を持つ者が、戦場において絶対的な優位に立つのです。バイデン大統領が就任してから、この問題に最も関心を寄せている理由もここにあります。 バイデン氏は、共産党を倒す鍵のひとつが、共産党軍のハイテク戦力の利用を遮断することだと知っているのです」
米司法省国家安全保障局のマシュー・G・オルセン司法次官補と商務省産業安全保障局(BIS)を所管するマシュー・アクセルロッド商務次官補が率いる「破壊的技術ストライクフォース」は、FBI、国土安全保障捜査局(HSI)および全米12都市圏の14の連邦検事局からの専門家が集まり、現在は米国内の12都市圏を中心に活動しています。