最近、中国の歌手・刀郎さんの新曲が爆発的な人気を博し、インターネット上では、短期間で数十億回の再生を記録しました。この曲の歌詞には深い意味が込められており、ある評論家はこの歌が中国共産党(中共)の表の皮を剥がしているとし、爆発的な人気は民意を反映していると見ています。
「馬戸は自分がロバであることを知らず、また鳥も自分が鶏であることを知らない…」
数年間、表舞台から姿を消した歌手の刀郎さんが、先日、アルバム『山歌廖哉』をリリースしました。そのうちの一曲『羅刹の海市』が爆発的な人気を誇り、話題となっています。
この『羅刹の海市』という曲は、蒲松齢の有名な著書『聊斎志異』に登場する商人の子の物語と同じタイトルです。この物語は、商人の子である馬驥が、遭難し、羅刹の国へたどり着いた様子が描かれています。そこでは、醜いものが美しいとされ、醜ければ醜いほど地位が高くなり、栄光と富を享受できる、白と黒が完全に逆転した世界でした。
刀郎さんの新曲『羅刹の海市』は、独特な歌詞と深いメッセージ性が多くの人の人気を集めています。統計によると、先月19日にリリースされてから1週間足らずで、インターネット上での再生回数が10億回を超えました。一部の情報筋によると、29日までに再生回数が50〜60億回に達した可能性があるとされており、かつてないほどの人気ぶりとなっています。
中国の市民・李さん
「この現象はある種の大爆発です。ここ数年、正義と悪、黒と白が混同される現象が多すぎました。この歌は、黒と白が混同され、善と悪が混同され、醜いものを美しいとするような、こうした悪しき現象を表現しています」
中国市民の李さんは、中国社会の現状は、この数十年の積み重ねの結果であると語ります。特にここ3年の、中共ウイルスの流行以来、中国では災害が頻発しています。しかし中共政権は「安定と見せかける」ために、隠蔽をしたり、白黒を混乱させたり、たびたび民衆に「デマを流している」などのレッテルを貼ったりすることに力を注いでいます。それゆえ、この歌はこうした社会の現実を反映しており、人々の強い共感を呼んでいるのです。
李さん
「近年は、このような歌という形での批評は少なくなってきています。だからこそ、この3年間、人々が心の内を口に出さなかった、あるいは口にできなかったという苦しい経験を、比較的曖昧な音楽という形で濃縮して表現したようなものです」
歌詞では、様々な比喩を用いて羅刹の国についての不条理を表しています。
一部のネットユーザーは、刀郎さんは、長年にわたって中国の芸能界から抑圧され、排斥されてきたことで、今回、復帰し、満を持してリリースした新曲には、こうした人々や芸能界をあざ笑う意味合いが込められていると言及しました。
李さん
「しかし、このような解釈もひょっとするとまだまだ視野が狭いのかもしれません。本当はもっと広範囲な今の社会現象を揶揄している可能性もあります。ただ、刀郎さんがこの社会、このシステムについてもっと高レベルな側面で揶揄しているのかどうかについては推測の域に過ぎません」
多くの人々は、この曲には単なる中国のエンターテインメントを超えた深い意味合いがあり、中国社会全体の現状に対する暗喩が込められていると解釈しています。
あるSNSユーザーは、この曲の視聴数が国民感情を表していると語っています。白黒が逆転し、醜いものを美しいと表現する羅刹の国が何を指すのか、皆わかっています。この歌は、中共の化けの皮を剥がしたと言えるでしょう。
米国在住の中国人学者 呉祚来氏
「人々はこの歌を通して、文化における感情の爆発を形成する機会を見つけました。あるいは、中国経済や中国で長年続いている抑圧、長年押さえつけられていた思いを開放する機会、突破口を見つけたのかもしれません。刀郎さんは実は引き金だったのです」
刀郎さんは2004年に『The First Snow of 2002』という曲で人気を博しました。しかし、一部の大物歌手から疎まれ、一時、創作活動に専念するために中国から姿を消していたという噂があります。今回の刀郎さんの復帰は、中国のインターネットを席巻し、大きな反響を集めています。
目下、秦剛外相の解任やロケット軍事件などのスキャンダルの隠蔽に躍起になっている中共ですが、刀郎さんの歌がさらに人気になることで、中共が潰しにかかるのではないかとの懸念の声が上がっています。
呉祚来氏
「刀郎さんには反骨精神があり、さらにカリスマ性があります。これらが中共政権への対抗に変われば、政府がそれに耐えられなくなる時がくるかもしれません。その時には中共もその勢力を阻止するために、行動に出るでしょう」
ある中国メディアが、刀郎さんに取材を申し込み、曲を作った思いや、今の反響についてどう思っているのか尋ねたところ、先月29日に刀郎さんサイドから、今後この曲に関する回答は行わないとの答えを得ました。