米国防総省は19日、今年度の中国の軍事動向に関する年次報告書を議会に提出しました。中国共産党(中共)の軍事戦略の発展に焦点を当て、中共の軍事力と将来の目標について詳細な分析を行いました。
報告書によれば、中共は2023年5月時点で500発以上の核弾頭を保有しており、2030年までに1000発以上保有する勢いであるといいます。
さらに、中共は昨年から軍事力を拡大し続けており、海外に対する軍事的脅威、特に台湾への軍事的圧力が急激に高まっています。
米著名軍事ブロガーのマーク氏
「報告書ではまた、共産党支配下にある中国が、国際秩序の再構築をする意志と能力がある唯一の競争相手だと明らかにしています。また同時に、中共は現在のルールに基づく国際秩序を弱体化させようとしています。この点から見ると、同報告書は中共の軍事拡大の実態を明らかにしているといえます」
同報告書のもうひとつの特徴は、中共軍の自己評価について列挙し、致命的な弱点を指摘していることです。
報告書の中で語られている「5つの不可能な実態」とは、まず指揮官が分析や情勢の判断ができないこと、そして上官の意図を指揮官が理解できないこと、戦う決心がつかないこと、さらに部隊人員を配置できないこと、緊急事態に対処できないことなどが挙げられます。
そして、「2つの隔たり」とは、中共軍の近代化におけるレベルと国家安全保障の需要との間に大きな隔たりがあり、さらに世界の先進国の軍とのレベルにも大きな隔たりがあることを意味しています。
さらに「2つの不足」とは、近代化戦争を戦う能力の不足と、各級幹部の近代化戦争を指揮する能力の不足を指します。
マーク氏
「中共軍にはそもそも先天的な弱点があります。それは『党が指揮をとる』ということです。多くの面において、西側の基層の指揮官のように自主的な意志決定をすることができなくなっています。戦術的な任務を遂行するには、指揮系統に則り、上官の承認を得なければならないのです」
時事評論家・藍述氏
「習近平主席は、中共軍は2027年までに武力行使による台湾統一の準備を整えるべきだと提案しています。つまり、現時点でまだ準備ができておらず、その能力も備わっていないということです」
しかし、習氏が2016年時点で中共軍の致命的な弱点を指摘し、現在対策を打ち強化しているという見方もあります。これは対戦相手を混乱させるための手段である可能性も否定できないといいます。
米サウスカロライナ大学エイケン校ビジネススクール教授・謝田氏
「習氏は自分を卑下し、やる気を出すため、あるいは相手を混乱させるためにこのような行動をとっているのかもしれません。時に本当は実力があるのに、相手を混乱させるために自身を弱くみせることもあります。米国の警戒心を解き、台湾や南シナ海に対し、中共の次の攻撃の第一歩を用意することが目的でしょう」
報告書ではさらに、中共の別の致命的な弱点についても言及しています。中共は1979年以降、実戦に参加したことがなく、実戦経験が著しく不足しているということです。専門家は、これが中共が頻繁に台湾海峡訓練を行なっている理由のひとつだと考えています。
藍述氏
「中共が台湾海峡周辺で頻繁に大規模な訓練を行っているのは、もちろん挑発という目的もありますが、多くの部分は台湾海峡周辺の地形や気候などについて熟知し、実戦で起こりうる数々の事態に対応するためといえるでしょう」