イスラエルとハマスの戦争が激化するなか、米国は紛争の拡大を防ぐために中東に海軍を派遣しました。同時に、中国共産党(中共)海軍の艦艇6隻が中東を巡航するという異例の事態も発生し、懸念が広がっています。
ハマスによるイスラエルへの攻撃が始まって以降、米国は2つの空母打撃群、強襲揚陸艦、司令船、そして約2千人の海兵隊などを中東に派遣しました。
香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、中共海軍の軍艦6隻も、同時期に中東に出現したといいます。
中共国防部のウェブサイトによると、5月以来、第44海軍護衛任務部隊がアラビア半島南部のアデン湾で護衛任務を遂行しているとしています。同部隊は、中共東部戦区に所属する052Dミサイル駆逐艦「淄博」、054Aフリゲート艦「荊州」、901型補給「千島湖」などから構成されているとのことです。
残る3隻は、052Dミサイル駆逐艦「烏魯木齊」、054Aフリゲート艦「臨沂」、901型補給「東平湖」であり、アデン湾で護衛を行う特別編成の第45部隊で、主に北部戦区の海軍部隊で構成されています。
この緊迫した地域に米中両国の軍艦が同時に出現したことに、世間の注目が集まっています。
台湾国防安全研究院の国防戦略・資源研究所の蘇紫雲所長によれば、この地域では多くのクルーズ船が海賊被害に遭っているため、中共海軍はペルシャ湾とアデン湾の間で護衛任務を実施しており、これまでに45隻の艦船を派遣しているとのことです。
台湾国防安全研究院の蘇紫雲氏
「第44部隊と第45部隊の引き継ぎの時に、イスラエルとパレスチナの戦争が勃発したために、この6隻の入れ換えは延期になるでしょう。元の3隻は遅れて帰還することになり、新たな3隻の到着で力が倍増します。日常の対海賊任務を遂行しながら、他方では主要な海軍部隊の役割を果たすことになるでしょう。なにしろ、同じ紅海海域では、イエメンの抵抗勢力が発射したミサイルや無人偵察機を米海軍の艦船が撃墜したばかりであり、その近くに中共の艦船もいるのです。両者は言うまでもなく象徴的な対比です」
052Dミサイル駆逐艦は、フェーズドアレイ・レーダーと垂直発射システムを装備し、中共海軍で運用されているミサイル駆逐艦の中で最高の性能を誇ります。その052Dミサイル駆逐艦は現在、中東に2隻同時に配備されています。
台湾国家政策研究基金会軍事専門家・李正修氏
「このことは、中国が米国に次いで中東に軍艦を派遣し、法と秩序を維持できる唯一の国であることを強調しています。私が考えるに最も重要なのは、米国以外の声を代表していることを世界に知ってもらいたいということだと思います。さらに中共は、中東の治安維持のために軍艦を派遣する能力を持っていることを示したいとはいえ、現時点では米国と長期間にわたって戦う能力を備えているわけではなく、特に中国から遠く離れた場所ではなおさらです」
21日、米国防総省はTHAADを含むミサイル防衛システムを中東に配備し、米軍も追加派遣すると発表しました。ロイド・オースティン米国防長官は22日、イラクとシリアの米軍基地を攻撃するロケットや無人機が目撃されているとメディアに語りました。中東で米軍や人々が攻撃される可能性が「劇的にエスカレートしている」と語っています。
蘇紫雲氏
「米軍はすでにはっきりと自分たちの立場を表明しています。今回の件ではイスラエルが被害者なので、自己防衛する権利があります。そのため、米軍は一つにはイスラエル軍をサポートし必要な物資を提供します。二つ目にはイランやレバノンなど、他の国々がこの問題に首を突っ込むのを阻止します。三つ目には、もし必要ならば米国人の人質を救出することです。これも自己防衛の一環です。最後に、イスラエルがガザを占領するのを間接的に防ぐ役割も果たします。結局のところ、米軍はパワーバランスを取るためにここにいる、というのが全体的な見方です」
蘇氏は、中共の艦船はたしかに同じく中東の海域にいるものの、米国の艦船とまったく同じ海域にいるわけではなく、意味合いも異なると指摘しています。
蘇紫雲氏
「実のところ、米海軍は地中海にいて、中共海軍はペルシャ湾にいるため、実はイラクとシリアが位置するアラビア半島を隔てているのです。中共海軍は2015年、ロシア海軍と合同演習を行うために地中海に進入したことがあります。ただ今回は地中海には入らず、南のペルシャ湾にいます。この場合、中共の軍艦は外交的存在としてそこにいる、ただそれだけです」
今年スーダンで内乱が発生した後、中共が052DL型ミサイル駆逐艦「南寧」と903型補給艦「微山湖」を派遣し、アデン湾から華僑を避難させたことが記憶に新しいです。しかし、今のところ、中共当局はまだ避難計画を発表していません。