中国経済の景気低迷はいまだ改善の兆しを見せず、中国共産党(中共)は効果的な刺激策の導入にかつてない圧力を感じています。先日、中共の上層部は、内部循環を活性化させるため、設備や消費財の大規模な「下取り」と、社会全体の物流コストの削減を命じました。多くの人は、中共は途方に暮れていると見ています。
2月23日、北京で中央財経委員会の第4回会議が開催されました。中共の党首で委員会の首席の習近平は、製品のアップグレードを加速させ、大規模な設備更新や消費財の入れ替えを奨励し、社会全体の物流コストを低減するよう提案しました。
1月26日、商務部の王文涛部長も記者会見で、今年の消費促進の重点は車両や家電の買い替えを推進することであると言及しています。
企業の設備更新は、GDP拡大の三大要素の一つである投資と見なされています。一方、伝統的な消費財の買い替えは、消費者側を対象としたもので、いずれも低迷する内部需要を刺激する目的です。
当局は、今回の新しいものへの買い替えに財政的な補助があるのかどうか、その資金を出すのは、中央政府か地方政府かについては、明らかにしていません。
実は、中共が「買い替え政策」を導入したのは今回が初めてではありません。
2008年下半期、国際的な経済危機の影響を受け、外部需要が激減しました。中共は数千億元の農村部への家電普及政策、「家電下郷」を打ち出しました。販売価格の13%を補助し、都市部以外の住民のテレビや冷蔵庫などの購入を刺激したのです。
この補助金は中央財政が80%を、地方が20%を負担しました。
今回の「買い替え政策」について、当局は市場をメインに政府が主導する方針であると主張しています。
復旦大学中国経済研究センターのシンクタンク研究員である馬紅漫氏は、過去の経験から、家電補助金は少なくとも製品価格の15%程度を占めなければ、市民は消費意欲を持たないと考えています。
元中国弁護士・民主活動家でカナダの「民陣」の会長、頼建平氏は現在、中共は財政的な困難に陥っており、大規模な補助金を提供する余裕がないと述べています。
元中国弁護士、カナダ「民陣」の頼建平会長
「需要の低迷、輸出の減少、世界全体でのサプライチェーンの移動により、多くの企業が苦境に立たされています。経営を維持できるだけでも良い状態だと言えるでしょう。政府の補助金がない中で、このような無駄な入れ替えを行うのは不可能です。一般市民も生計に苦しむ中で、不必要な出費を抑えるでしょう」
今年1月、中国の消費者物価は2009年の金融危機以来最大の下落を記録し、消費低迷の兆しはより深刻になっています。伝統的な消費財の中で、最大の部門は自動車でした。しかし、信頼感の低下と飽和状態の市場が重なり、中国の乗用車と新エネルギー車の販売台数は、1月にそれぞれ前月比15%と37%の割合で減少しました。
中国乗用車市場情報連合会は、2月の販売台数が前年同月比で15%以上減少すると予測しています。
元中国資産運用会社の最高コンプライアンス責任者である梁少華弁護士は、現在の状況で新品への買い替えを促進することは困難であるとし、「中共はすでに途方に暮れている」と語っています。
梁少華弁護士
「人々の収入は減少し、将来への期待も低く、経済全体がうまくいっていません。古い製品を下取りに出して新しいものに買い換える意欲がありません。自動車や耐久消費財など、人々は古い製品の寿命を延ばそうとしています。動機も見込みもお金もないので、この政策に効果があるとは思えません」
さらに、2022年の中国の社会物流総費用はGDPの14.7%を占め、日本、EU、米国の5%〜7%を大きく上回りました。
頼建平氏は、習近平が物流コストの削減に言及したことで、利益団体が高速道路の過剰な料金徴収などに対する非難を受ける可能性があると考えています。
賴建平氏
「既得の利益団体の本来の利益や余剰利益を圧迫することは可能です。しかし、これは中国の経済状況を根本的に変えることはできず、物流コストの全体的な構造を根本的に変えることもできません。彼は局所的で非常に限られた範囲で、いくつかの効果的な搾取を行うことしかできません」
ロイター通信によると、成長を維持するための有力な政策を導入するという点で、中共の上層部は過去10年間で最も大きな圧力に直面しているといいます。
中共「両会」が開催される中、経済問題を中心とした中央委員会第三回全体会議はまだ開催されていません。
コンサルティング会社、ロジウム・グループのパートナーであるローガン・ライト氏は、中共には良い選択肢が残されていないと指摘しています。今後の全国人民代表大会での強力な景気刺激策の導入にも悲観的な見方を示しています。
IMF(国際通貨基金)の最新報告書では、中国の経済成長率は2024年に4.6%まで鈍化すると予想されています。
英エコノミスト誌の調査部門、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)も同様の判断を下し、中国経済は今後10年間減速を続け、2030年には3%を下回ると予想しています。