最近、アフリカにおける中国共産党(中共)の影響力活動を研究する情報筋が、中共がアフリカのメディアへの資金提供、コンテンツの共有、アフリカの記者のトレーニングなどを利用して、アフリカ市民が公平で正確なニュースを得る機会を大きく狭めており、虚偽のニュースを流していることを明らかにしました。
中共が支配する最大の報道機関、新華社はアフリカに37か所の支局を持っています。中国最大のアフリカ向けデジタルテレビ事業者である「四達時代」は、「アフリカの20か国の農村部の1万世帯に衛星アンテナを設置し、中国のデジタルテレビネットワークに接続している」と報告しています。この事実は、アフリカ戦略研究センターのポール・ナントゥリア氏と、米国外交政策評議会(AFPC)の中国問題上級研究員、ジョシュア・アイゼンマン氏が最新の報告書で指摘しています。2氏は報告書で、中共が、アフリカでのメディア影響力を、どのように拡大し、偽情報を広めているかを詳述しています。
1990年代に中国人記者がメディアを牽引していたのとは対照的に、現在の中共官製メディアの報道には多くのアフリカ人が登場し、その内容も以前より巧妙になっています。例えば、ケニアだけでも、中共の報道機関は500人の記者と地元スタッフを採用し、毎月少なくとも1800件のニュースを発信しています。
中国ーアフリカプレスセンター(China-Africa Press Center、CAPC)は、アフリカのジャーナリストを、中国のメディア企業に10か月間派遣するプログラムを実施しています。「一帯一路」ジャーナリストネットワークは、アフリカのジャーナリストを、世界各国の同業者と繋げる取り組みです。
中国全国記者協会は、中共統一戦線工作部と緊密に連携し、中国とアフリカの記者団体間の交流を統括しています。
中共は、財政的に困難を抱える多くのアフリカの報道機関に支援を提供し、その見返りとして、中共を好意的に描く報道を行うよう求めています。
中共宣伝部は、アフリカの政府や民間の放送事業者とコンテンツ共有に関する協議を行い、研修プログラムを提供しています。アフリカの記者たちは、中国からの全額支給の旅行を楽しみ、一流の待遇を受けながら、中共が宣伝する内容を植え付けられます。
新華社はケニアの国営メディアグループと、コンテンツ共有に関する協定を結びました。これにより、東アフリカおよび中央アフリカの4か国にある8つの放送局やテレビ局に接触が可能となり、2800万人のソーシャルメディアのフォロワーと、日刊紙9万部の配布量を確保しました。
台湾の国防安全研究院、国家安全研究所の研究員補佐(アシスタント研究員)、楊 一逵氏
「ZTEとファーウェイは、1998年には既にアフリカに進出しています。広く知られている中非協力フォーラム(FOCAC)は、2006年に中非メディア協力プロジェクト(中国とアフリカ諸国のメディア間の協力を強化)の計画を提案しました。また、(中共は)多くのアフリカの学生が、中国への交換留学を行うための補助金を提供し、長年にわたりアフリカのネットワーク上のキーオピオニオンリーダー(KOL:Key Opinion Leader)を積極的に育成してきました」
台湾の国防安全研究院、国家安全研究所の研究員補佐である楊一逵氏は、中共がアフリカのメディアに及ぼす影響力は包括的だと指摘しています。彼らがアフリカのメディアに深く関与する主な目的は三つあり、その中でも特に重要なのは国連での投票です。
楊一逵氏
「アフリカ諸国は、国連における中国の支持基盤と見なされています。二つ目の目的は、アフリカ諸国を味方につけて、国際的な法的闘争やメディアを通じた世論形成を行うことです。そして三つ目は、南の国々を同盟させ、アメリカ主導のルールに基づく国際秩序に挑戦することです」
アイゼンマン氏が指摘したように、2008年の世界金融危機が終息した直後、中共のメディアは目立って勢力を拡大し始めました。多くの欧米メディアが、予算削減により、海外での報道を縮小せざるを得なくなる中、中共は「対外プロパガンダ」キャンペーンに総額72億5千万ドル(約1兆5125億円)を投じて、世界中で展開しました。
研究によると、アフリカのメディア業界で、中共影響力に対抗するための米国政府の取り組みはほとんど見られません。その主な原因は、長期にわたって米国の民主党と共和党がアフリカに対して示してきた、関心の低さにあるとされています。
VOAの上級スタッフは「大紀元」に対し、5年前には米国のボイス・オブ・アメリカがアフリカに5つの支局を持っていたが、現在は1つだけになったと述べました。
米サウスカロライナ大学エイキン校の謝田教授
「中共とアフリカの独裁者たちは、基本的に同じ調子で話しています。彼らは公式の資料に加えて、中共独自のプロパガンダを使って、低コストでコンテンツを制作することができます。そのため、西側のメディア、例えばボイス・オブ・アメリカなどは、この点で中共と競争するのが非常に難しいのです。また、中共の安価な製品が世界に広がっているように、彼らの安価な共産主義プロパガンダも世界に広がっていると言えます」
米サウスカロライナ大学エイキン校の謝田教授は、米国は世界保健機関や世界貿易機関などの国際組織への支援を徐々に減らし、代わりに各国との多国間または二国間の協力を強化し、同時に中共との関係を引き続き切り離していくべきだと考えています。中共が資金不足に陥るにつれて、これらのアフリカの小国も自然と距離を置くようになるでしょう。
一方で、楊一逵氏は、中共がアフリカで人々の心をつかむことに成功していないと見ています。
昨年実施された世論調査の結果、アフリカの人々が、中共の国家、軍事、社会に対する統制手法を認めていないことが明らかになりました。アフリカ人の71%が民主主義をより支持していると回答しています。