中国の国有銀行、大幅な給与カット

ロイター通信が1日に情報源の話を引用して報じたところによると、中国建設銀行は本部に勤める従業員の給与を少なくとも10%カットすることになり、これは経済不況が金融業界に与える影響を示しています。

ロイター通信によると、中国で第二位の商業銀行である中国建設銀行は、本部に勤める従業員に対して少なくとも 給与の10%をカットするよう要求したと、2人の詳しい情報源が明らかにしました。

1人の情報筋によると、高位幹部たちの給与は大幅にカットされる見込みです。また、中国建設銀行が抱える大多数の子会社では、本社スタッフよりも給与を減額していますが、業績の良い部門では減額幅を一桁に抑えているところもあります。

中国の資本市場で経験豊富な専門家、徐真氏が、給与カットが行われているのは中国建設銀行に限らないと述べました。

中国資本市場の専門家、徐真氏
「中国建設銀行のほか、5月初旬には平安銀行の全社員の給与がカットされたという報道がありました。事前予告なしに社員のボーナスがカットされ、その減額率は60%、70%、場合によっては90%にも及んだとされています。最近、中国郵政貯蓄銀行の従業員は、最近の会議で事業の転換と給与のカット、住宅積立金のカットが発表されたと明かしました。これらの広範囲にわたる給与カットの背景には、銀行が直面する利ざやの縮小、利益の減少、不良債権の増加の圧力、包摂的金融サービスや中小企業支援、手数料カットなどの複合的な要因があります」

かつて「金の飯碗(収入が安定し高待遇な職業)」とみなされていた銀行業界ですが、今回の広範囲にわたる給与カットは、経済不況が金融業界に与える影響の深刻さを示しています。中国の銀行だけでなく、西洋の金融機関も中国経済の低迷と資本市場の活動低下の影響を受け、中国におけるビジネス部門で過去数年で、最大規模のリストラが行われています。

さらに、政治的な要素として、中国共産党は「共同富裕」という方針を積極的に推し進めています。中央紀律検査委員会は今年2月に、「金融エリート論」や「西洋模倣論」といった誤った思想を排除するよう求める声明を発表しました。この動きに呼応して、中国の大手金融株式会社である中国国際金融(CICC)は、今年に入り、国内の投資銀行部門の従業員の基本給を25%減らしました。さらに、2024から2026年にかけて、国内の投資部門の従業員を三分の一カットする計画があるとの報道があります。

大紀元のコラムニスト、王赫氏
「中国の銀行の収入は全体的に見ると社会的には比較的高い水準にありますが、業界内での収入格差はかなり大きいです。中国共産党はここ数年、銀行業界の調整を行っており、金融業が稼ぎ過ぎだと指摘しています。『金融エリート』という言い方があります。贅沢な生活をしている金融従事者に大きな圧力がかけられています。その結果、銀行は自ら給与をカットするようになりました。これは一方では上層部からの政治的圧力に対応するためであり、他方では現在は収益が上がらない状況にあるためです」

これらの要素により、多くの国営および民間の金融企業が、給与とボーナスのカットを行い、従業員に対して高級な衣服や腕時計を仕事中に着用しないよう求めています。中国の高所得者層の生活様式にも変化が見られています。

徐真氏
「今年4月、500mlの飛天茅台(白酒)の価格が2800元(約5万6000円)から2500元(約5万円)に下がりました。その後、6月にはその卸売価格がさらに2100元(約4万2000円)まで落ち込みました。たった3ヶ月で茅台酒の価格は25%も下落しました。これは、富裕層の消費行動が下方修正されていることを物語っており、金持ちでさえ茅台が手の届かないものになっているのです。実際には、茅台だけでなく、世界の多くのブランド品も値下がりしています。ルイ・ヴィトン、ダフネ、高級自動車、そして北京や上海、広州、深センの良い学校付近の不動産価格もそれぞれ下落しています」

徐真氏の分析によると、この度の中国経済の低迷は、まず裕福な中間層の消費が減少し、その後に富裕層の消費が減るという流れで始まっています。また、現時点では経済回復の兆しが見えず、人々は将来に対して信頼を持てていない状況です。

大紀元のコラムニストである王赫氏は、社会の上層部の多くの人々が影響を受けると考えていますが、中国の経済や政治体制が大きく歪んでいるため、逆に利益を得る可能性がある二つのタイプの人々がいると指摘しています。

王赫氏
「第一に、権力と深く結びついている特権層です。第二に、今の情勢を利用して金儲けをする人々や、投機を得意とする人々です。そして、権力者とそれほど密接な繋がりがない上層階級の多くは地位が低下し、収入が減少しています」

中国国内の政治や経済の状況が悪化し続ける一方で、先進国との関係も次第に悪化しているため、多くの中国の億万長者や高純資産者が海外への移住を選択しています。

英国の投資移民コンサルティング会社であるHenley & Partnersのデータによると、2023年には1万3500人の中国の百万長者が海外に移住しました。これは、2022年に比べて25%の増加です。さらに、2025年までに合計で70万人以上の中国の富豪が海外に移住すると推定されています。

 
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