一党独裁の中国共産党(中共)は、最近その「全国人民代表大会(全人代)」制度を大々的に誇示し、「人民が主権を持つことを保障する」と主張しました。しかし、学者は、中共の全人代は真の民意機関ではなく、中共が「全過程にわたる人民民主」と自称しているが、実際には政治運営の各段階で管理・統制が行われていると指摘しています。
中共の官製メディアによると、中共全人代成立70周年の式典で、党首は「少数による権力掌握」から「人民が主権を持つ」ことを実現したと述べたと報じています。
しかし、外部からは、この主張は実際の状況とは大きくかけ離れているとしています。中共が宣伝する「民主主義」は、完全な虚偽であるという声もあります。
オランダの「反共の声」代表、劉飛龍氏
「このような発言は特に滑稽で皮肉だと思います。中国(中共)はより民主的にも開放的にもなったわけではなく、むしろ、さらに独裁的で閉鎖的になっています。中共全国人民大会の代表の7割以上が共産党員で、そのうち約4割は中共の幹部です。中共は全人代代表の存在を通じて、あたかも議会制度が存在するかのように外部に宣伝し、独裁統治を隠蔽しているのです」
また、台湾中央大学客家語・社会学科准教授の曽建元氏は、中共の党国家体制の下で、全人代は判を押すだけという意味で党のゴム印に過ぎないと指摘しています。
曽建元准教授
「今日の中国本土では、国家権力間の監視や抑制のメカニズムは存在していません。それはすべてが一体化しているからです。中共には真の反対政党が存在せず、中共の党国体制は、政治に携わり、党に所属する全人代の参加者の意思を統制しています。また、中国本土には市民社会も存在していません」
曽准教授はさらに、民主主義の基本精神は民意による政治であり、国家の指導者や政府は民意に責任を負うべきだと述べています。しかし、中国では国民が全人代の代表を選挙で選び、罷免する権利や自由はありません。
ラジオ・フリー・アジア(RFA)は2021年に、北京市で独立候補として区・県レベルの全人代代表選挙に立候補した14人の市民が、中共当局の厳しい管理対象となり、自宅軟禁や強制的な「旅行」(北京から離れる)に追い込まれたと報じました。
曾建元氏
「中共では、反対意見や市民社会、反対政党の存在は許されません。仮にこのような異議があれば『中央に対する妄言』とされ、党外であれば『国家政権の転覆を煽動する』行為と見なされます。したがって、政権者に対する監視を行う反対勢力は存在しない。これがどうして民主主義制度と言えるのでしょうか?」
同日、大会で全人代トップの趙楽際氏は、習近平の発言を「しっかり学び、理解する」必要があると宣言しました。
曽建元氏
「もしこれが民意機関であれば、数周年を祝う際に、政府の監視において何を成し遂げたのか、そしてこの国の自由、民主主義、法の支配、人権がどれだけ保障されているのかを宣伝するでしょう。しかし実際には、国家主席や党の総書記がこの問題について語り、世界の一般的な概念とは一致しない『全過程にわたる人民民主』について話しているにすぎません。実際には(民主主義は)存在しません。実際には全過程の管理統制に過ぎないのです」