米大統領選が終盤に突入し、有名企業家イーロン・マスク氏は自らトランプ氏を支援しています。マスク氏が政治の場で行使できる発言権や自由度は、中国のビジネスマンとは対照的です。
米大統領選は最終週に突入し、テスラとスペースXの創始者であるイーロン・マスク氏が共和党大統領候補で前大統領のトランプ氏を全面的に支援しています。マスク氏は、選挙日まで毎日100万ドルを、米国憲法の修正条項第1条、第2条を支持する「スイングステート」7州の有権者に提供すると発表しました。
米国在住の元上海企業家 胡力任氏
「米国は自由で民主的な国です。民間企業の経営者であっても、彼も一人の普通の米国国民に過ぎません。彼は自身の影響力を利用して、多くの人々が彼の支持する側を応援するよう促しているだけで、これはごく自然なことです。多くの有名人も同じようなことをしています。しかし、中国ではこれは実現できません」
マスク氏が自らの政治的立場や意見を率直に表明するのに対し、中国の企業家は政治に関して言及を避けざるを得ません。たとえば、かつてアジアで最も裕福だったアリババ・グループの会長ジャック・マー氏は、2020年10月に講演で中国共産党(中共)の規制当局が金融のイノベーションを抑圧していると公然と批判しましたが、その後、当局からの圧力を受け、アント・グループの上場計画が中止されました。マー氏は一時的に完全に公の場から姿を消し、数年後にはアント・グループの支配権を事実上放棄することになりました。
もう一つの例として、華遠地産の元会長で不動産界の大物である任志強氏が挙げられます。彼は富豪であるだけでなく、ジャック・マー氏にはない「紅二代」の身分を持ち、中共の元副主席である王岐山氏の親友でもあります。しかし、任氏は当局を批判したことで18年の重刑を受け、最近では獄中で重病にかかっているにもかかわらず治療を受けられていないとの報道がされています。
胡力任氏
「1980年代初めから習近平が政権を握るまでの期間、民間企業家にはまだある程度の発言権があったと言えるでしょう。しかし、現在では彼らの発言権は完全に奪われ、すべてが政治を優先する形に戻っています。かつての時代に戻りつつあり、現在は『国進民退』の流れです。将来の中国では、著名な民間企業家が生まれることはもうないでしょう」
『フォーブス』誌は10月24日に、16日時点で、マスク氏はトランプ支持のために政治行動委員会(PAC)へ1億1800万ドル以上を投入したと報じました。
一方、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は、カマラ・ハリス副大統領の選挙支援団体「フューチャー・フォワード(Future Forward)」に5千万ドルを寄付しました。
しかし中国では、民営企業家が資金力を持っていても、特定の政治家に表立って寄付することはできません。彼らは表向きには手を汚さず、共産党幹部の家族の代理人を務めたり、当局の「共同富裕」政策に従って資金を提供したりすることが多いのです。さらには当局の度重なる取締まりの中で、巨額の罰金を支払うことを余儀なくされています。
在米時事評論家 藍述氏
「あなたが実力を持つようになると、その力をどれだけ発揮できるでしょうか? この自由な空間で、どの程度まで影響力を発揮できるでしょうか? それこそが、米国の自由な制度と民主的な環境がもたらす可能性です。 一方で、中共社会では、ジャック・マー氏や他の多くの大物企業家たちは一見華やかに見えますが、正直なところ、彼らも中共の体制下で少しばかり大きく育った『ニラ』に過ぎません。いつでも刈り取られる運命にあります」
政治的に発言権を持たず、経済面でも「刈り取られる」リスクがあり、さらにコロナ後も中国経済が低迷し続ける中、多くの中国民間企業家は国外への逃避を選んでいます。
胡力任氏
「中国政府は様々な口実や手段を用いて民間企業を弾圧し、民間の資産を奪おうとしています。現在、ほとんどの民間企業家は避難を余儀なくされており、まだ国内で踏みとどまっている企業家たちも、非常に大きな危機感を抱いています。彼らの視野や戦略は一般の人々よりも高いものがあるため、多くの民間企業家がすでに国外に退路を確保しているのです」
藍述氏
「彼らと一般の中国の庶民とを比べてみると、違いはただお金の多寡に過ぎません。彼らが享受できる最も基本的な権利も庶民と同じであり、庶民の基本的な権利が保障されない限り、彼らの権利もまた保障されないのです」
今年、中共当局はこれまでの数年間の厳しい監視や民間企業への圧力を変えようとし、初めて「民営経済促進法」の制定を打ち出しました。しかし、草案では依然として民間企業が中共の指導を堅持し、党の監督を受けることが強調されています。これについて評論は、この立法方針が民間企業の本質的な要望からかけ離れていると指摘しています。