敏感な時期に中共が方針転換 日本の水産物輸入を解禁

日本人男児が深センで刺殺され、日中関係がさらに緊張する中、中国共産党(中共)は日本と福島第一原発の処理水問題に関して合意に達しました。日本側は国際原子力機関(IAEA)の枠組みのもとで、独立したサンプリングを行う国際監視を許可し、中国側は段階的に日本の水産物の輸入を再開することになりました。しかし、専門家はこれが日中関係の本質的な改善を意味するものではないと見ています。

中共外交部は9月20日に、福島第一原子力発電所の処理水放出問題に関して日中双方が4つの合意に達し、中国側が段階的に日本の水産物輸入を再開すると発表しました。

日本メディアも報じているように、岸田文雄首相は同日、IAEAと電話協議を行い、東京電力福島第一原発の処理水放出の監視枠組みを拡大することで合意しました。この枠組みのもとで、中国を含む第三国が海水および放出前の処理水のサンプリングに参加することになります。

同時に、日本政府は中共に対し、直ちに禁輸措置を撤回し、日本の水産物の販売ルートを拡大するよう求めています。

昨年8月、中共は福島の処理水が海に放出されることを理由に、日本の水産物輸入を全面的に禁止していました。

『日本経済新聞』は、中共がこの水産物禁輸を「日中関係における強力なカード」としてみなしていると報じましたが、現在北京が解決策を模索しているのは、両国関係のさらなる悪化を避けたい意図があると見られています。

というのも、日中が合意に至る2日前の9月18日、深センで日本人児童が中国人に刺されて死亡する事件が発生し、日本国内では大きな怒りが広がりました。

台湾大学政治学科の陳世民副教授
「過去数年、中共は国内の民族主義的な感情を操作してきましたが、その操作が行き過ぎた結果、悪影響が生じている可能性があります。結局のところ、中共にとって、現在の経済が徐々に減速していくことや社会にある程度の動揺が見られる中で、習近平は明らかに中国国内の民族主義的な感情を刺激することで、国内の経済社会問題から注意を逸らそうとしているのです」

陳世民副教授は、日本の10歳の子どもが深センで殺害された事件に関して、中共が最大の責任を負うべきだと強調しました。そのため、中共が日本の水産物輸入を再開しても、日本人の対中感情は変わらないだろうと述べています。

陳世民氏
「今や世界中で中国だけが日本の水産物を全面的に禁止しています。私が言っているのは全面的な水産物のことです。過去の台湾では、福島原発に近い5つの県に対してのみ制限がありました。しかし、中国は日本のすべての水産物を全面的に禁止しており、世界中でこのような禁止を行っているのは中国だけです」

陳世民氏はまた、民族主義の感情は「諸刃の剣」であり、それを利用して国内の社会経済問題から目を逸らすのは簡単ですが、いったん感情を煽ってしまうと、それを収めるのは非常に困難であり、中共政府自体に弊害が生じる可能性があると警告しました。

近年、日中関係は緊張状態が続いています。2020年、習近平の日本国賓訪問はCOVID-19の影響で無期限延期され、2023年には日本の製薬会社アステラス製薬の日本人男性社員が中国で拘束されました。今年6月には日本人母子が蘇州で襲撃され、先月は中共の軍用機が初めて日本領空に侵入しました。また、9月18日には、中共の空母「遼寧」と2隻の駆逐艦が日本の領海に入り、日本政府が抗議しました。

大紀元のコラムニスト王赫氏は、中国の現状を踏まえ、経済的に米国や日本、欧州との関係改善が急務であると指摘しています。さらに、中共内部の政治状況も変化しており、対外政策の大幅な調整が必要だと述べています。

大紀元のコラムニスト 王赫氏
「日本では自民党総裁選挙があり、首相が交代します。中共は同時にロシアと共同軍事演習を行い、海上巡視も行い、日本の周辺を取り囲んでいます。中ロの連携が日本に圧力をかけています。これらの観点から見ると、日中関係は非常に複雑です。経済面では中共は日本に依存していますが、軍事面では中共は緩和の兆しを見せず、むしろ日本への圧力を増しています」

王赫氏は、中共は現在経済的な困難に直面しており、国内の民衆の不満も高まっているため、また過去のように対日・対米憎悪を宣伝して注意を逸らそうとしていると述べました。これが中共の一貫した手法であり、教育の基本的な方法でもあるとしています。

また、王赫氏は、中共が世論を通じて日中関係を改善しようとしても、民間感情はすぐには変わらないだろうと指摘し、日本の中国に対する信頼は薄れつつあると述べました。政治、経済、外交のいずれにおいても、日本は中共に対する警戒を強めており、経済的な撤退の傾向もますます顕著になっていると分析しています。

 
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