中共がチベットに巨大ダム建設 インドとバングラデシュが懸念

中国共産党(中共)は、チベットに世界最大の水力発電所を建設する計画を進めています。このプロジェクトは下流域で暮らす数百万人の生活に影響を及ぼす可能性があり、インドとバングラデシュの両国に懸念を引き起こしています。

12月25日、中共メディアは、中共政府がヤルンツァンポ川下流域での水力発電プロジェクトの建設を最近承認したと報じました。

中国電力建設集団が2020年に発表した試算によれば、ヤルンツァンポ川下流の水力発電プロジェクトが完成すれば、年間発電量は3千億キロワット時に達する見込みです。これは、現在世界最大の水力発電所である三峡ダムの設計発電量を大きく上回り、その3倍以上となります。

米在住の時事評論家 唐靖遠氏
「この計画には多方面の意図があると思います。まず第一に、中共はエネルギーの大きな需要ギャップを埋めるために、水力発電所を必要としています。特に、産業発展の分野で必要とされるクリーンエネルギーの供給が急務です。さらに、中共は新エネルギー産業を、今後米国との大国間競争での足場と位置づけており、そのため電力需要の不足は非常に深刻な問題となっています」

ヤルンツァンポ川の水力発電プロジェクトの建設費用は、三峡ダムを上回ると見込まれています。三峡ダムの総建設費は2542億元(約5兆4907億円)で、当初の試算である570億元の4倍以上に膨れ上がりました。

唐靖遠氏
「もちろん、このようなやり方は諸刃の剣だと思います。地方の債務が急速に膨れ上がり、将来的に債務が破綻すれば、さらに深刻な結果を招く可能性があります。しかし、中共当局は、長期的なリスクや債務破綻の危機を気にしている余裕がないように見えます。今はむしろ短期的な緊急対策に重点を置いているようです。現在の中国経済は、まるで自由落下のような急激な下降状態にあります」

中共メディアは、この巨大ダム建設がもたらすとされる重要な効果や利益について誇張して報じていますが、プロジェクトの具体的な場所については明らかにしていません。

唐靖遠氏
「このようなやり方は、非常に短絡的な行動だと思います。例えば三峡ダムの建設時、中共は巨大な利益をもたらすと考えていました。しかし、実際に完成してみると、中共が得た電力収益は、地域全体の自然環境の破壊、移住を余儀なくされた住民や一般市民への影響、さらにはその地域に長期的に及ぼす負の影響に比べると、短期的な利益はほとんど価値がないものとなりました」

このダムの建設によってどれだけの人々が住む場所を失うのか、また地元の生態系にどのような影響を与えるのかについて、中共は一切説明していません。

唐靖遠氏
「これらの行為は、地方政府だけでなく中央政府全体の財政負担や債務をさらに増大させる可能性があります」

中国四大高原の一つであるチベット高原は、「世界の屋根」とも呼ばれています。この地域は険しい山々に囲まれ、人がほとんど住んでいない荒涼とした土地ですが、世界の5分の1の人口にとって極めて重要な場所です。その理由は、この地域に大量の淡水資源が蓄えられているからです。

チベット高原には広大な氷河が広がっており、これらの氷河はアジアの主要な10本の河川の水源となっています。数世紀にわたり、この地域の生態系を育み、アジア全体の環境維持において重要な役割を果たしてきました。

ヤルンツァンポ川は、チベットからインドへ流れ込む国境をまたぐ河川で、インドではブラマプトラ川として知られています。その後、ジャムナ川としてバングラデシュに流れ込みます。

唐靖遠氏
「中共はインドを非常に強力な潜在的競争相手と見なしています。このダムを建設すれば、インドのこの地域での水利用を事実上制御し、まるでインドの喉元を押さえ込むような状況を作り出します。これにより、中共は地政学的競争の分野でインドに対して一定の優位性を得ることができます」

中共幹部は、チベットでの水力発電プロジェクトについて、環境への影響や下流域の水供給に大きな影響はないと主張しています。

唐靖遠氏
「このプロジェクトは短期的にはGDPを押し上げ、中共が切実に必要としているエネルギーの供給や投資の活性化につながるかもしれません。しかし、長期的には、この地域全体の生態環境に取り返しのつかない破壊をもたらすことになります。それは、将来の世代の利益を奪うものであり、いわば『目先の利益にとらわれて長期的な利益を犠牲にする愚かな行動』だと言えるでしょう」

インドとバングラデシュは、中国のダム建設計画に懸念を示しており、このプロジェクトが地域の生態系を変えるだけでなく、下流の河川の流れや河道を変える可能性があると指摘しています。

 
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